各種の特典活用によって税負担を減らせる青色申告
確定申告を行う場合、「白色申告」と「青色申告」のどちらか一方を選ぶことになります。白色申告とは、いわば原則的な申告方法であり、青色申告に認められている、後述のような特別な控除などの特典はありません。
一方、青色申告とは、複式簿記などの手法に基づいて帳簿を記載し、その記帳から正しい所得や所得税および法人税を計算して行う申告方法です。もともと青色の申告用紙を使用して申告していたことが、その名の由来となっています(なお、現在の申告用紙は青ではありません)。
開業の際には、どちらの申告方法を選択するか迷うことになるでしょうが、基本的には青色申告にすることをおすすめします。青色申告には、税法上、以下のような特典があり、それらを上手に活用することによって、税金の負担を大きく減らすことが可能となるからです。
最高65万円の控除が可能になる青色申告特別控除
①青色申告特別控除
正規の簿記の原則(一般的には複式簿記のこと)により記帳している場合には、その記録に基づいて作成した貸借対照表を損益計算書とともに期限内に提出した確定申告書に添付することにより、最高で65万円が控除されます。
また、正規の簿記の原則による記帳ではなく、簡易な帳簿による記帳であっても、最高で10万円の青色申告特別控除の適用を受けることが可能となります。なお、現金主義による所得計算の特例の適用を受けている場合などは、65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができませんが、最高10万円の青色申告特別控除の適用を受けることは可能です。
②青色事業専従者給与の必要経費算入
事業主と生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族で、その事業にもっぱら従事している人に支払う給与については、仕事の内容や従事の程度等に照らして適正な金額であるといえる場合には、その支払った金額を必要経費に算入することができます。
純損失の金額を翌年以後3年間にわたって差し引ける
③損失の繰越しと繰戻し
事業から生じた純損失の金額を、翌年以後3年間にわたって、順次各年分の所得金額から差し引くことが認められています(純損失の繰越し)。また、前年も青色申告をしている場合には、純損失の繰越しに代えて、その損失額を前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税額の還付を受けることも可能です(純損失の繰戻し)。
なお、このような青色申告の特典を使った場合、白色申告の場合に比べて具体的にどれだけの節税ができるのかを、国税庁のパンフレットでは以下のようなケースで紹介しています。青色申告の節税効果の高さが非常にわかりやすく示されているので、参考にしてみてください。
事業の利益・・・600万円
(事業にかかる収入から必要経費を差し引いた金額で、事業専従者控除または青色事業専従者給与の金額を差し引く前の金額)
妻・春子さんの青色事業専従者給与の金額・・・120万円
社会保険料控除・・・50万円
生命保険料控除・・・12万円
地震保険料控除・・・5万円
扶養控除・・・38万円
基礎控除・・・38万円
(注)所得税の場合
●白色申告の場合
妻・春子さんは事業専従者ですから、事業専従者控除額86万円を事業の利益から差し引いて税額を計算した結果、所得税、復興特別所得税、事業税および住民税の各税の合計額は、82万4100円となります。
●青色申告の場合
妻・春子さんに支払う青色事業専従者給与の金額120万円を事業の利益から差し引き、さらに青色申告特別控除65万円の適用を受けたうえで税額を計算した結果、各税の合計額は、56万5100円となります。
妻・春子さんに基礎控除以外の所得控除がなければ、所得税、復興特別所得税および住民税の合計額は3万3100円となりますので、国税太郎さんと妻・春子さんが負担する税金の合計額は59万8200円となり、白色申告の場合に比べて22万5900円の節税となります。
また、青色申告特別控除10万円の適用を受けた場合でも、各税の合計額は67万6300円となり、妻・春子さんに基礎控除以外の所得控除がなければ、所得税、復興特別所得税および住民税の合計額は3万3100円となりますので、白色申告の場合に比べて11万4700円の節税となります。
(注)住民税均等割額は、5000円として計算しています。