院長には勤務医時代のような手厚い保障がないだけに…
勤務医だったときには、有給休暇や傷病手当金などの制度があったでしょうから、たとえ病気やケガになって休まねばならなくなったとしても、生活に対する不安はなかったはずです。
しかし、動物病院の院長には傷病手当金のような保障は全くありません。もし病気などで倒れてしまったら、とたんに収入は途絶えてしまいます。
そこで、「転ばぬ先の杖」を用意しておく、万が一のときのために収入を保障してもらえるような民間の保険に加入しておくことが望ましいでしょう。
たとえば、被保険者が傷害または疾病により所定の就業不能状態になったときに一定額の給付金が支払われる保険として、「就業不能保険」があります。最大で1億円支払われるものもあるので、いざというときには頼りになるでしょう。
それに加えて、傷害保険や生命保険などのオーソドックスな保険にも加入しておけばより安心です。さらに、個人年金保険に入ることで、院長の退職後の退職金を用意しておくことも検討しておくとよいでしょう。
なお、法人の場合には、一般的に法人が契約者、法人の役員である院長が被保険者、法人が受取人という形の契約が多いでしょう。生命保険の種類にもよりますが、その保険料の全額を経費処理することができるものもありますし、そのあたりは個人事業にはない大きなメリットです。
生命保険は、被保険者ごとに、死亡リスク・重大疾病リスク・入院リスクなどをカバーする商品がありますが、契約の際には、その法人の現況や目的、保険料の負担を十分に考慮することが重要です。したがって、法人の状況をよく理解している税理士のアドバイスを受けるのもよいでしょう。
各種経営指標を同業種の平均値と比較し、問題点を抽出
自院の対前年売上高比率や損益分岐点比率、人件費などを同業種の平均値と比較することは大切です。
もし業界の平均値より低いようであれば、経営の中身に何らかの問題がある可能性があります。その問題点を改めることによって、売り上げや利益の向上を図ることが可能となるでしょう。
動物病院の場合には、中小企業リサーチセンターが公表している「小企業の経営指標」や、TKCの発表する「TKC経営指標」などに記載されている「獣医業」の項目が同業種の平均値を示すデータとして参考になります。
ちなみに「TKC経営指標」の最新データでは、平成26年1月決算~平成26年3月決算の対前年売上高比率や損益分岐点比率などが以下のように示されています。
対前年売上高比率 102・9%
損益分岐点比率 90・2%
従事員一人あたり売上高 95万円(月)
従事員一人あたり限界利益 75万円(月)
従事員一人あたり人件費 43万1000円(月)
これらの数字を手がかりにすると、たとえば自院の対前年売上高比率が業界平均の102・9%を下回るようであれば、成長性に課題があるといえ、何らかの策を早急に講じる必要があるといえます。
なお、対前年売上高比率は、従事員1人あたり売上高の伸び率などと比較することも大切です。前年から従事員が増えたような場合、両比率を参照することにより「1人あたりの生産性を保ちながら成長してきているのか」をチェックすることが可能となるからです。