住宅ローン「いくらまで借りられる」のか?
仮にこの条件で、どれくらい借りることができ、どれくらいの物件が買えるのか、考えてみましょう。
まずは年収400万円。年間返済額の上限は120万円、月額にすると10万円になります。もし20年で返済となると、単純計算で2400万円、30年で返済となると3600万円の物件が上限となります(関連記事:『年収階級別…住宅ローン「借入可能金額」早見表』)。
では年収600万円ではどうでしょう。総返済負担率が30%から35%となり、年間返済額は210万円、月の返済額は17万5000円となります。購入可能な物件価格は、20年返済の場合は4200万円、30年返済であれば6300万円が上限です。
都心では億ションも珍しくありませんが、この条件で購入となると、20年返済の場合は年収1450万円、30年返済の場合は年収1000万円がひとつの目安となります。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性の平均年収は637万9300円。30代後半では610万円35010円、40代前半では687万6100円。適正値から考える買える物件は、30代後半では20年返済で4200万円、30年返済で6300万円、40代前半であれば20年返済で4550万円、30年返済で6825万円が上限となります。
【大卒男性会社員平均年収】
「20~24歳」334万2100円
「25~29歳」440万4900円
「30~34歳」523万4900円
「35~39歳」610万3500円
「40~44歳」687万6100円
「45~49歳」758万6300円
「50~54歳」869万0100円
「55~59歳」835万6000円
「60~64歳」569万2200円
「65~69歳」490万5100円
「70歳~」483万8300円
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より推計
もちろん、あくまでもこれは住宅ローン審査における総返済負担率から単純に逆算したもの。実際に借りられるかどうか、買えるかどうかは、家計の状況によって異なりますし、諸経費等考えると、実際の上限はさらに下のものになります。ひとつの基準として、参考程度に考えてください。
住宅ローン…「上限いっぱい借りて物件を購入」したら
年収600万円なら、月々の返済額が17万円強、30年ローンで6300万円の新築物件が買える……。計算上は確かにそうですが、実際に借入可能金額の上限いっぱいまでローンを活用しても問題ないのでしょうか。
もし年収600万円の会社員が平均的な賞与をもらっているとしたら、月給は36万円ほど。仮に夫婦と子供2人の家族構成だとすると、手取り額は29万7000円ほどになります。そこから17万円のローンを払うと、残りは12万7000円。これで家族4人を養っていく必要があります。
前出の総務省『2020年家計調査』によると、年収600万円世帯の平均消費支出は28万4040円。1万7000円ほど黒字になる計算です。しかしこの調査における年収600万円世帯の平均住居費は1万4000円ほど。月々17万円のローンを払いながら、平均的な暮らしを実現するのは、あまりに非現実的といえます。
年収世600万円の会社員が借入上限いっぱいの物件を買うのなら、配偶者の収入もあてにしなければ、あまりに無謀な計画だということがわかります。住宅ローンを活用する際、「いくらまで借りられる」ではなく、「いくらなら返せるか」を基準にしなければ、家計破綻は避けられそうもありません。
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