南米コロンビアは、新型コロナウイルスへの対応で悪化した財政の正常化に苦慮しています。そもそもコロンビアは赤字体質であったうえに、新型コロナで財政がさらに悪化しました。そこで財政改革に取り組んだものの、市民らの抵抗で改革は頓挫、格下げとなりました。ただ、コロンビア政府は新たな財政改革法案を模索しており、法案の成否が今後の展開を左右しそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

南米コロンビア:財政改革の頓挫を受け、外貨建て債券格付けはジャンク級に格下げ

米格付け会社のS&Pグローバル・レーティング(S&P)は 2021年5月19日にコロンビアの自国通貨建て長期債格付けをBBBからBBB-に、外貨建て長期債格付けをBBB-からBB+に、それぞれ引き下げました。主にドル建で発行される外貨建て長期債格付けが投資適格とされるBBB-を下回ったことで投資不適格(ジャンク債)の格付けとなりました。

 

なお、他の主な格付け会社によるコロンビアの格付けはムーディーズ・インベスターズ・サービスがBaa2(BBBに相当)、フィッチ・レーティングスはBBB-と、現段階では共に投資適格級の格付けとなっています。

どこに注目すべきか:格下げ、財政改革、ジャンク債、正常化

南米コロンビアは、新型コロナウイルスへの対応で悪化した財政の正常化に苦慮しています。そもそもコロンビアは赤字体質であったうえに、新型コロナで財政がさらに悪化しました。そこで財政改革に取り組んだものの、市民らの抵抗で改革は頓挫、格下げとなりました。ただ、コロンビア政府は新たな財政改革法案を模索しており、法案の成否が今後の展開を左右しそうです。

 

コロンビア債券は年初から軟調な動きです(図表1参照)。年初からの下落はドル建債券のベースとなる米国長期金利の上昇(価格は下落)が年初から上昇傾向だったことが背景です。ただ、足元米長期金利の動向が落ち着き、ドル建新興国債券市場全体は回復傾向ですが、コロンビア債券は波に乗れない展開となっています。

 

日次、期間:2020年5月20日~2021年5月20日 ※米ドル建て新興国債券:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数。米ドル建てコロンビア債券は同各国指数
[図表1]コロンビアペソ(対ドル)と米ドル建て新興国債券指数日次、期間:2020年5月20日~2021年5月20日
※米ドル建て新興国債券:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数。米ドル建てコロンビア債券は同各国指数
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

その背景の一つが財政改革の先行きが不透明なことです。新型コロナで悪化した財政を立て直すため、コロンビア政府は付加価値税や所得税の対象拡大など痛みを伴う財政改革法案を4月15日にコロンビア議会に提出しました。しかし、議会は法案に激しく反対したうえ、市民の抗議活動が活発化しました。 S&Pによると抗議活動は概ね平和的に行われましたが、一部は暴徒化したと述べています。これを受け、コロンビア政府は5月2日に法案を取り下げ、財政改革は頓挫しました。

 

この流れの中でS&Pはコロンビアを格下げしました。今後は既にBBB-を付与しているフィッチの動向が注目されます。

 

ただ、コロンビア政府は新たな財政改革法案を模索しており、財政改革の試みを継続する意向です。また、コロンビア経済は比較的健全でインフレ率は足元まで1%台と低水準です(図表2参照)。消費も回復傾向であるだけに、財政改革の動きを見守ってからの格下げ判断を想定する声も市場からは聞かれます。もっとも、コロンビア政府が5月月初に当初の財政改革法案を取り下げた後も、市民の道路封鎖が続くなど不満は残っています。南米は新型コロナの収束には程遠く、ワクチン接種も遅れ気味です。そのような中での正常化は相当の困難を伴うことが想定されます。この点は程度の差は大きいにせよ、コロンビアに限らず南米各国に共通した悩みといえそうです。

 

月次、期間:2016年4月~2021年4月、共に前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]コロンビアの消費者物価指数(CPI)と小売売上高 月次、期間:2016年4月~2021年4月、共に前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロンビアの外貨建て債券はジャンク級に格下げ』を参照)。

 

(2021年5月21日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧