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南米コロンビア:財政改革の頓挫を受け、外貨建て債券格付けはジャンク級に格下げ
米格付け会社のS&Pグローバル・レーティング(S&P)は 2021年5月19日にコロンビアの自国通貨建て長期債格付けをBBBからBBB-に、外貨建て長期債格付けをBBB-からBB+に、それぞれ引き下げました。主にドル建で発行される外貨建て長期債格付けが投資適格とされるBBB-を下回ったことで投資不適格(ジャンク債)の格付けとなりました。
なお、他の主な格付け会社によるコロンビアの格付けはムーディーズ・インベスターズ・サービスがBaa2(BBBに相当)、フィッチ・レーティングスはBBB-と、現段階では共に投資適格級の格付けとなっています。
どこに注目すべきか:格下げ、財政改革、ジャンク債、正常化
南米コロンビアは、新型コロナウイルスへの対応で悪化した財政の正常化に苦慮しています。そもそもコロンビアは赤字体質であったうえに、新型コロナで財政がさらに悪化しました。そこで財政改革に取り組んだものの、市民らの抵抗で改革は頓挫、格下げとなりました。ただ、コロンビア政府は新たな財政改革法案を模索しており、法案の成否が今後の展開を左右しそうです。
コロンビア債券は年初から軟調な動きです(図表1参照)。年初からの下落はドル建債券のベースとなる米国長期金利の上昇(価格は下落)が年初から上昇傾向だったことが背景です。ただ、足元米長期金利の動向が落ち着き、ドル建新興国債券市場全体は回復傾向ですが、コロンビア債券は波に乗れない展開となっています。
その背景の一つが財政改革の先行きが不透明なことです。新型コロナで悪化した財政を立て直すため、コロンビア政府は付加価値税や所得税の対象拡大など痛みを伴う財政改革法案を4月15日にコロンビア議会に提出しました。しかし、議会は法案に激しく反対したうえ、市民の抗議活動が活発化しました。 S&Pによると抗議活動は概ね平和的に行われましたが、一部は暴徒化したと述べています。これを受け、コロンビア政府は5月2日に法案を取り下げ、財政改革は頓挫しました。
この流れの中でS&Pはコロンビアを格下げしました。今後は既にBBB-を付与しているフィッチの動向が注目されます。
ただ、コロンビア政府は新たな財政改革法案を模索しており、財政改革の試みを継続する意向です。また、コロンビア経済は比較的健全でインフレ率は足元まで1%台と低水準です(図表2参照)。消費も回復傾向であるだけに、財政改革の動きを見守ってからの格下げ判断を想定する声も市場からは聞かれます。もっとも、コロンビア政府が5月月初に当初の財政改革法案を取り下げた後も、市民の道路封鎖が続くなど不満は残っています。南米は新型コロナの収束には程遠く、ワクチン接種も遅れ気味です。そのような中での正常化は相当の困難を伴うことが想定されます。この点は程度の差は大きいにせよ、コロンビアに限らず南米各国に共通した悩みといえそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロンビアの外貨建て債券はジャンク級に格下げ』を参照)。
(2021年5月21日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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