企業年金と個人年金保険は10年で給付が終わる
70歳で終了する企業年金
「企業年金があるから、老後資金は万全だ。60歳で退職しても悠々自適の暮らしができる」
こんなふうに考えている人は要注意です。
たしかに大企業に勤めていれば、企業年金もそれなりに支給されます。さらに個人年金保険に加入し、公的年金もあるとなったら、年金額はかなり多めになります。
この資金計画、どこにも落とし穴はないのでしょうか。
企業年金が10年確定給付で月額15万円、個人年金保険が10年確定給付で月額5万円、公的年金が月額20万円あるパターンで考えてみましょう。
60歳から70歳までの10年間は月々40万円の年金があるため、現役時代に近い暮らしができそうです。
ところが、企業年金と個人年金保険は10年で給付が終わります。つまり、70歳からは年金が半減してしまうわけです。
このギャップは大きいといえます。ある日突然、いままでの半分のお金で生活することになっても、そうたやすく対応できるものではありません。70歳以降の年金額に合わせて、生活スタイルをあらかじめ下方修正しておくことが大事です。
また、配偶者の死亡リスクも考慮に入れておきたいものです。配偶者が亡くなれば、その分の公的年金はなくなります。
会社員だった夫が死亡した場合、妻が受け取れる年金は、自分の基礎年金と夫の遺族年金です。遺族年金は夫が受け取っていた年金すべてが対象ではなく、厚生年金部分の4分の3となります(老齢厚生年金を受け取っているときは、その一部が停止になります)。
妻が先立った場合は、妻が受け取っていた年金分が消滅します。
2人暮らしがひとり暮らしになったとしても、生活費は半分になりません。支出はさほど変わらないのに収入だけが減ってしまう状態は、年金生活者にとって厳しい状況だといえます。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員