本連載の大きなテーマである「有効活用地」「問題地」「納税用地」のうち、今回からは「問題地」のポイントについて見ていきましょう。

貸宅地と市街化調整区域にある土地が問題地に・・・

問題地の典型例としては、やはり貸宅地と市街化調整区域にある土地を挙げることができます。

 

まず、貸宅地は、前述のように半永久的に貸し出された状態となるため、資産としての魅力に乏しく、売りたくても買い手はなかなか現れません。たとえ売却できたとしても、借地人がいるために買い手が土地を自由に利用・処分できず、低い地代収入しか得られないので、二束三文で、タダ同然の額でしか売れません。かといって持ち続けていても、固定資産税の3倍程度しか地代収入を得ることができず、せいぜい1%程度の利回りしか期待できません。

 

一方、市街化調整区域は、市街化を抑制して、自然環境等を守る区域として、開発や建築等が制限されている区域のことです(逆に市街地として積極的に整備することを想定している区域を市街化区域といいます)。つまり、原則的に建物を建てることは認められていません。

 

したがって、戸建てやアパート、マンション等の住居を建てることはできません。「えっ、市街化調整区域にも住宅が建っているのを見たことがあるけれど?」という人もいるかもしれませんが、それは、あくまでも例外的に認められているものにすぎません。

 

市街化調整区域は行政の都合で、一方的に定められたものです。そのため、市街化調整区域に指定される以前に存在した住宅等については、いわば「既得権」としてそのままそこに住み続けてよいとされているのです。これを「既存宅地」といいます。

 

したがって、このような既存宅地に該当しない農地や山林は、住宅地として利用することはできません。そのため、市街化調整区域にある農地や山林についてはほとんど市場価値がなく、売ろうと思っても、買い手を見つけることは通常、困難といってよいでしょう。

貸宅地は等価交換で処分する

では、こうした価値の乏しい貸宅地や市街化調整区域を、効率的に処分することは全く不可能なのかといえば、そのようなことはありません。

 

まず、貸宅地については「等価交換」という手段があります。貸宅地の貸主をA、借主をBとしましょう。貸宅地については、土地全体の価値を、一般的に住宅地であれば、Aが底地権(借地権のついた宅地の所有権)という形で4割、Bが借地権という形で6割を持っているとみなされています(下図参照)。

 

このような状態をAが解消したいのであれば、自分の底地をBに買ってもらうという方法が考えられます。仮に土地の価格が1000万円であれば、底地を400万円で買ってもらうというわけです。

 

しかし、貸主側から買い取りをお願いしてしまうと、足元を見られるおそれがあります。不動産の売却については、一般的に、先に「買ってくれないか」といった方が〝負け〞になってしまうからです。

 

たとえば、スーパーで売っているような洗剤なり、ゴミ袋なりの生活用品は無個性であり、定価があるので、売値は特売でもしていない限りは、いつもほとんど変わりません。しかし、不動産は個性が強いので、定価というものが存在しません。また、売る側は通常、何かしらのやむをえぬ事情があって売却を選択することが多く、「買ってもらわなければ困る」といういささか立場の弱い状況にあります。

 

買い手の側は、そのような売り手の弱みを知っているので、「何も積極的に欲しいわけではありませんが、○○円であれば買ってあげてもいいですよ」などと相手の足元を見て、交渉を進めようとします。

 

底地の売却の場合も、その例外ではありません。このような展開になってしまうと、前述した底地と借地権の割合は「3対7」あるいは「2対8」にまでなり、本来であれば400万円で売れたのに、300万円あるいは200万円でしか売れなくなるかもしれません。つまりは、貸主であるAにとってより不利な割合になるおそれがあるのです。

 

したがって、ストレートに借主に貸宅地の購入を申し出るのは、決して得策ではありません。では、どうすればよいのでしょうか。次回はその対策をご紹介します。

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    本連載は、2014年1月31日刊行の書籍『相続財産を守りたければ不要な土地は片付けなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    小池 誠一郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

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