相続税は、相続する遺産の割合に応じて各相続人が負担するのが原則です。しかし相続人の一人が本来支払うべき相続税を納付しなかった場合、どうなるのでしょうか。今回は、相続税の「連帯納付義務」について、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が解説していきます。

「連帯納付手続」の流れ

相続税の申告・納税期限は、被相続人が亡くなり相続が開始した日の翌日から起算して10ヵ月と定められています。

1.納税の期限までに相続税が支払われていない場合、税務署から本来の納税義務者へ督促状が送付されます。

 

2.本来の納税義務者が督促状送付後1カ月経過しても納税しない場合には、連帯納付義務者(他の相続人・受遺者)に「完納されていない旨のお知らせ」が送付されます。

 

3.連帯納付義務者による納税が必要な場合に「納付通知書」(連帯納付義務の通知)が送付されます。

 

4.連帯納付義務者が「納付通知書」が届いて2か月経過しても納税しない場合は、連帯納付義務者に督促状が送付されます。

 

上記4を経ても納税がされない場合、財産の差し押さえが行われることになります。差し押さえの対象となる財産について、本来の納税義務者の財産か、連帯納付義務者の財産か、明確な規定がありません。税務署の判断で、残念ながら連帯納付義務者の財産が差し押さえられる可能性があるわけです。

立て替え払いした相続税の請求

連帯納付義務を負った相続人などが相続税を立て替え払いした場合、本来の納税義務者に対して、立て替えた相続税の返済を請求することができます。これは求償権と言われています。

 

元々の相続税を支払えない相続人から立て替えた税金が返ってくる可能性は低いと思われますが、それでも返済を請求しないと、求償権を放棄したもの(贈与があったもの)とみなされ、贈与税が課税される可能性がありますので、これも注意が必要です。

相続税の連帯納付義務を回避するための対策

ご説明してきた通り、相続税の支払い義務がある相続人が納税をせず、他の相続人等に連帯納付義務が生じてしまった場合、制度上、これを免れる方法はありません。

 

したがって、他の相続人等の納税に不安がある場合には、事前(相続税の申告前や相続手続中)に以下のような対策が考えられるかと思います。

 

・遺産分割の話し合いの時点で、関係者全員の納税の計画を確認しておく。

 

・納税に不安がある相続人がいる場合、金融機関の相続手続の中で、納税額相当の金銭を預かっておく。

 

・遺産を取得しない相続人は相続放棄をしておく。

 

事後的には回避することはできませんので、ご不安な方は早めに対策を講じておくことをお勧めいたします。

 

 

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