現物・代償・換価…遺産分割の3つの方法
遺産分割の方法には下記の3つの方法があります。
1)現物分割
財産ごとに現物のまま取得者を決める分割方法
2)代償分割
相続人の一人、または数人が財産の現物を取得し、その現物を取得した相続人が他の相続人に金銭等を支払う分割の方法
3)換価分割
相続人の一人、または数人が相続により取得した財産を金銭に換価し、その換価代金を分割する方法
たとえば遺産の大部分が自宅であり同居の相続人がいる場合、自宅は同居の相続人が取得し、他の相続人に代償金を支払う事で自宅を共有とせず、遺産分割をまとめることができます。
同居の相続人がおらず自宅が空き家となった場合、換価分割を利用すればその売却代金を各相続人が均等に金銭を取得することで公平な分割をすることが可能です。
しかし、税務上の特例や社会保険料、事務負担などによりどちらを選択するか悩むケースもあります。そこで代償分割と換価分割に焦点を当て、事例を用いながら相違点を見ていきたいと思います。
・ 自宅の土地の相続税評価額:3,000万円(100㎡)
・ 相続人:子Aさん(同居)と子Bさん(別居)の2人
・ 売却した場合の金額:4,000万円
「小規模宅地等の特例」で変わる「相続税」
被相続人と同居していた親族が自宅を相続し、申告期限まで引き続き所有かつ居住している場合には、土地について本来の相続税評価額の20%の金額で申告することができます。
代償分割により同居していたAが単独で自宅を相続し、代償金として1,500万円をBに支払うこととすれば自宅の土地は3,000万円×20%=600万円で申告することが可能です。
換価分割を選択し、相続税の申告期限までに売却をすると、AもBも小規模宅地等の特例は適用できず、それぞれ1,500万円(計3,000万円)で申告することになります。
仮に2分の1ずつ換価分割する趣旨のもと、
・ A 3,000万円×1/2×20%=300万円
・ B 3,000万円×1/2=1,500万円
代償分割の場合は600万円、換価分割の場合は3,000万円、2分の1の共有分割(申告期限後に売却)の場合は1,800万円(300万円+1,500万円)での申告となり、分割方法により申告する金額が異なることになります。