※画像はイメージです/PIXTA

「人生100年時代」となった日本。老後の生き方について考える必要性が高まり、「終活」という言葉も一般的なものとなりました。日本人の終活にまつわるトラブルの実例とその解決策を「終活スペシャリスト」が詳しく解説します。

転勤族だった父の死後、全国各地に銀行口座が…

●ケース2 「父親の生前に銀行口座を聞いておけばよかった!」

 

Hさんの亡くなった父親は、現役時代、2~3年に1回のペースで転勤のため全国各地を転々としていました。仕事上の必要もあって、転勤先ではその地域にあるほとんどの金融機関に口座を作って給与振り込みなどに使っていました。

 

四十九日に家族が集まったときHさんは「そういえばお父さんは転勤が多かったから、いろいろなところに口座をもっているのでは?」と思い、家族に相談してみました。

 

「言われてみるとそうだわ。お付き合いの関係とかで、行く先々でほとんど全部の銀行や信用金庫に口座を作って、いろいろ使い分けていたわ」と母親。長いサラリーマン生活で転勤先は8ヵ所あったので、口座をもっている金融機関の数は20ではきかないということでした。

 

どこにいくら入っているのかを調べることになりましたが、これが一筋縄ではいかなかったのです。あったはずの銀行がなくなり、銀行名が変わっているという事実に直面したのです。

 

まず、どこの銀行に口座をもっていたかを突き止める。次にその銀行がいまはどうなっているかを調べる。口座がある金融機関に連絡し、父親が亡くなり相続が発生したことを伝えて口座からお金を引き出すための書類のやり取りをする。この工程を20回以上繰り返すことになりました。Hさんは、せめて口座をもっている銀行名だけでも聞いておけばよかったと思ったそうです。

 

◆覚えておきたいトラブル防止策◆

 

転勤が多かった人の場合、家族どころか本人も覚えていない銀行口座がそのまま残っているケースがままあります。

 

いまは規制が厳しくなったのでできなくなりましたが、昔は配偶者や子どもの名義で口座を開くこともできました。遺品整理を仕事にしている知り合いによれば、亡くなった人名義の通帳はもちろん、家族名義の通帳がかなりの割合で出てくるそうです。

 

なかには残高が数百万円あるものもあり、遺品整理を頼んできたご家族に非常に感謝されることがあるのだとか。いまでこそ空前の低金利が続いている日本ですが、1970~80年代はインフレで、10年間預け入れれば倍になる金融商品がたくさんありました。

 

子どもの将来に備えるつもりで預け入れをしていたものの、忘れてそのままになっている金融商品はかなりの数に上るのではないかと思います。

 

せっかく親御さんが遺そうとしてくれたお金です。無駄にならないよう、存命中から口座の確認をしておきましょう。

 

 

竹内 義彦

一般社団法人終活協議会 代表理事

終活スペシャリスト

 

 

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