こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

Siriの開発は現在の仕事につながっている

33歳でビジネスから引退し、Siriの開発に参画する

 

私は33歳でビジネスの現場から引退し、そのあとはアップルやオックスフォード出版、台湾の大手IT機器メーカーBenQなどのデジタル顧問を務めました。

 

アップルで私が在籍したのは「クラウド・サービス・ローカリゼーション(Cloud ServiceLocalization)」という部門です。そこでクラウドをローカライズさせる、つまり製品を外国でも使えるように外国の原語に対応させる仕事をしていました。

 

私が参画したとき、iPhoneやiPadなどのアップル製品に搭載されている音声アシスタントSiriは、英語しか話すことができませんでした。しかし、私が退職する頃にはいろいろな言語を話すことができるようになっていました。

 

退職前の最後のプロジェクトは、Siriに上海語を話させることでしたが、ちょうどその頃行政院に関わるようになったので、このプロジェクトには完全に参加したわけではありません。ただ、上海語の大きな辞書を開いてスキャンしていたことを、今でもとても鮮明に記憶しています。私は上海語を話すことができないので、いわば泳げない人が水泳のコーチを行っているようなものでした。

 

初めてMacを購入したとき、セットアップをしていると「情報をシェアしますか」と聞かれると思います。シェアするのが嫌ならばSiriは機器上であなたと会話をするだけですが、シェアしてもいいのならSiriは自身が学んだ単語をクラウドに送り、他のSiriとの間で情報を共有します。

 

この場合、Siriは人間が話すのを聞いて、機器上で理解できるかどうかを判断します。自らが理解できればすぐに返答しますが、専門用語などで理解できないと、Siriは自分が新しい単語を学習したことをクラウドに知らせ、他のSiriとデータの共有を図ります。日本のアニメ『攻殻機動隊』の中に出てくるAIを搭載した多脚戦車「タチコマ」と同様に、各自が持っているSiriが新しい単語を学習すれば、それをシェアする仕組みになっているわけです。

 

私は、このようなSiriのプロジェクトを支援していました。それ以外には、MacやiPhoneに内蔵されている繁体字中国語の辞書をアップルのシステムに取り込むことも行いましたが、この仕事は私がほとんど行ったものです。それ以外にもたくさんのことを行いましたが、全般的にはシステムに多言語を取り込む作業の支援をしていました。

 

こうした仕事のキャリアは、現在の仕事にも直接的・間接的につながっています。

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

 

 

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

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