株を買う際は、「株価がいくら以下になったら売る」と決めて売る「ロスカット」が重要になります。それが冷静にできないと、損失を拡大させてしまいます。一方、信用取引の一種である「空売り」は理論上、無限大の損失を被りかねない取引です。ではそんな空売り時のロスカットについては、どのように考えればよいでしょうか、見ていきましょう。※本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する、株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、個人投資家が株式市場で勝ち続けていくための極意について説明していきます。

「空売りの損失」は理論上、無限大である

空売りとは、担保で差し入れ株を借りて売ることです。もちろん期限内にその株を返済する必要があるのですが、もしその株が下落すれば、最初に売った金額より買い戻す金額の方が安くなります。ですからその差額で利益を得ることができます。

 

「下がりそうな株を空売りし、下がったら最初より安く買い戻して借りた株を返済し、差額で儲ける」のが、空売りという取引の主目的なのです。

 

しかし空売りをする場合は、理論上無限大の損失が起こり得ることと、現物取引よりも多くの経費が確実にかかることにも、注意が必要です。

 

前者をもう少し説明します。

 

1株1,000円の株を100株現物買い(=10万円分)し、その株が1株0円になってしまった場合、損失額は購入金額である10万円です。

 

一方、その1株1,000円の株を100株空売りし、その株が1株100万円に値上がりしてしまったら、どうなるでしょうか? 最初に空売りをして手に入れた金額が10万円ですが、1株100万円×100株=1億円で株を買い戻して返済する必要が出てくるのです。

 

これらはあくまで、非現実的で極端な想定です。倒産による上場廃止でもなければ株価が0円になることはないでしょうし、借りた株の返済期限までの間に1,000円の株が100万円に上がることもないでしょう。ストップ高やストップ安という仕組みもありますから、1日における株価の変動幅にも限りがあります。

 

しかし、それが起きる可能性は0か、またそれに近いことが起きる可能性が0かと問われれば、そうでもありません。あくまで理論上ですが、空売りの損失は無限大に膨らむ可能性があるのです。

 

損失、無限大なんて怖すぎる(※写真はイメージです/PIXTA)
損失、無限大なんて怖すぎる(※写真はイメージです/PIXTA)

空売りでも「妥当な価格」を算出しておく

では、そんな空売りのロスカットについては、どう考えればよいでしょうか。実はこれは、基本的には株を買う時と同様に考えてもよいでしょう。

 

空売りする場合も買う時と同様に、「その株の妥当な価格はいくらぐらいなのか」を算出しておくべきです。そこまで値下がりするだろうと予想して、買えばよいのです。

 

そして、株価というのは特に短期的には、偶然としか思えないランダムな動きを見せます。ですから、「単なる偶然でどこまで上がってしまうか」も算出しておきましょう(買う場合は、「単なる偶然でどこまで下がってしまうか」)。そこまでだったら、いくら上昇しようがまた下落するはずですから、放っておけばよいのです。

 

ただし、それ以上に上がってしまったら、それは当初の自分の想定が誤っていたということです。ですからそうなってしまえばどこまで上がるかはわかりません。すみやかに売り建玉(空売りした分の株)を決済するべきでしょう。

 

つまり、「単なる偶然でも上がってしまうであろう価格の上限」が、空売り時のロスカット基準だといえるでしょう。

 

ちなみに、現在の株価に比べて「妥当であろう価格」と「単なる偶然でも上がってしまうであろう価格」が低い銘柄が、空売りにはおすすめです。つまり、十分に割高で、下落幅が大きく、上昇幅が小さいと思える株こそが、空売りに適しているのです。

 

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