<あらすじ>
主人公の橘なおみは、夫が実家の《たちばな病院》の病院長を引き受けることになったため、日本で暮らすことになった。なおみはアメリカの病院でマネージャーをしていたが、日本とアメリカとでは勝手が違う。病院長夫人となったなおみは、橘家の執事・後田から「日本の医療」について学ぶ(【⇒マンガを全部見る】)。
1点=10円…各診療内容の金額を決める「メニュー表」
「診療報酬」とは、患者を診察・治療した医療機関や、保険調剤を行った薬局などに支払われる代金のことです。日本においては、国民皆保険のため公的保険により支払われます。
その医療サービスの報酬は、メニュー表のような、診療報酬点数表で定められています。
診療報酬制度は「出来高払い方式」を原則としているため、初診料は何点、XX手術は何点という具合に、受けた診療行為の内容に応じて点数がつけられています。
点数は、医科、歯科、調剤を合わせたもので、診療行為一つひとつに対して決められています。
診療報酬の点数は「1点=10円」と定められているので、点数×10円がその診療行為の料金となります。
なお、診療報酬点数表には次の3種類があります。
①医科診療報酬点数表
②歯科診療報酬点数表
③調剤報酬点数表
医科診療報酬点数の中心は、①基本診療料と、②特掲診療料の2つです。基本診療料は基本料金的な意味合いをもち「初・再診料」と「入院料等」の点数で構成されており、特掲診療料はオプション的な意味合いがあり、医療サービスを提供しただけ算定できます。特掲診療料は「医学管理等」「在宅医療」「検査」を含む13部門で構成されています。
診療内容に関わらず「一定額を支払う方式」が拡大中
前述したように、診療報酬制度は現在「診療報酬点数表を基にした出来高払い方式」が原則となっていますが、近年は「定額支払い方式」が拡大傾向になります。
「定額支払い方式」は、「診療1件あたり」「診療1日あたり」などの要素で診療報酬単価を定め、診療の内容にかかわらず一定額を支払う方式です。厚生労働省は、この「定額支払い方式」を拡大することで診療報酬体系を簡素化したいと考えています。
日本の定額支払い方式で代表的なものは、診断群別の1日あたりの支払い方式であるDPC/PDPSとなっています。
看護師不足の原因にも…診療報酬制度の問題点
日本の医療は、厚生労働省が細かい規制や価格などをコントロールしています。医療に関する規制などは、法律改正や関連通達の発出などによってコントロールされていますが、そこで定められる診療報酬点数という医療行為の価格はそのときどきで、医療の方向性にも大きな影響を与えています。
近年では、診療報酬における手厚い看護配置への高い評価が看護師不足を招き、医療機関間の看護師の争奪戦へと導きました。このように、診療報酬点数の変化は医療界に多大な影響があるのです。
診療報酬制度の支払額は「合計点数×10円」で算出
さて、診療報酬点数は、診療行為一つひとつに細かく設定がなされています。点数は1点=10円に置き換えることができます。たとえば、100点の治療があれば診療報酬で病院に支払われる金額は1000円、自己負担が3割であれば300円となります。CTの撮影(CT撮影料とCT読影料)が●点であれば●×10円となり、その日に受けた診療行為の合計点数×10円が、その日の診療報酬となります。
この診療行為一つひとつを積み上げ、医療費として請求するのが「医療事務」を担当する職員の仕事です。
この出来高払い方式は、一つひとつの医療行為に制限がないため、提供される医療の質は高くなりがちな一方で、無駄な医療が提供されてしまうという可能性があります。
これに対し、包括支払い方式は医療費抑制に効果があるとされていますが、医療の質が低下する可能性もあります。
木村 憲洋
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療情報学科 准教授