2021年3月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

生産・前月比+2.2%と予想外に半導体不足の影響小さく上昇に転じる

 

経済産業省の生産指数・基調判断は「生産は持ち直している」で据え置き

 

4~6月期まで生産予測指数等から見て4四半期連続・前期比上昇見込み

 

3月分一致CI前月差はプラスになり、基調判断は「改善」へ上方修正か

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・3月分速報値・前月比は+2.2%と、2ヵ月ぶりに上昇した。季節調整値の水準は97.7で、20年2月の98.7以来の水準になった。新型コロナウイルス感染拡大前の20年1月の99.8にかなり近づいてきた。3月分は、輸出が好調で福島県沖地震の影響からの挽回生産もあった、半導体不足の影響が小さかったこともあった。前年同月比は+4.0%で18ヵ月ぶりの上昇になった。

 

●3月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、9業種が前月比上昇、6業種が前月比低下となった。電気・情報通信機械工業、汎用・業務用機械工業、生産用機械工業は低下に寄与したが、自動車工業、無機・有機化学工業、プラスチック製品工業等が上昇に寄与した。

 

●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、今回の21年3月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっている。

 

●先月発表された製造工業予測指数3月分は前月比▲1.9%に低下する見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、3月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.4%になる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は▲3.1%~+0.3%の見込みであった。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+2.2%の上昇になったが、これは製造工業予測指数や、試算値の上限を大きく上回る予想外の伸び率である。

 

●3月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+0.8%と2ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は+3.9%で18ヵ月ぶりの上昇となった。

 

●3月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+0.1%と3ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は▲10.1%と11ヵ月連続の低下となった。

 

●3月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲0.8%で、2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲12.3%と6ヵ月連続の低下となった。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10~12月期、20年1~3月期は、どちらも「在庫調整局面」であった。20年4~6月期は、出荷の前年同月比が▲19.9%、在庫が同▲3.4%と、出荷は大幅に減少したものの在庫調整がさらに進んだ。20年7~9月期は、出荷の前年同期比が▲13.5%、在庫が同▲5.7%と、引き続き「在庫調整局面」の状態にあったが、10~12月期では出荷の前年同月比が▲3.3%、在庫が同▲8.4%、そして21年1~3月期では出荷の前年同月比が▲1.2%、在庫が同▲10.1%と、20年4~6月期以降在庫が減少する中で、在庫調整がかなり進んで「意図せざる在庫減局面」になっている。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると4月分は前月比+8.4%の上昇、5月分は前月比▲4.3%の上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、4月分の前月比は先行き試算値最頻値で+4.6%になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は+2.8%~+6.4%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、4月分を先行き試算値最頻値前月比(+4.6%)で延長したあと、5月分を製造工業予測指数前月比(▲4.3%)、6月分を横這いで延長すると、4~6月期の前期比は+2.7%の上昇になる。また4月分・5月分を製造工業予測指数前月比(+8.4%、▲4.3%)で延長したあと、6月分を横這いで延長すると、4~6月期の前期比は+5.0%の上昇になる。4~6月期は4四半期連続の前期比上昇が期待される状況だ。

 

(3月分の景気動向指数・速報値予測)

 

●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+4.0程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、マネーストックの2系列が前月差マイナスになると予測した。

 

●3月分の一致CIは前月差+2.7程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差プラスに、投資財出荷指数1系列が前月差マイナスになると予測した。

 

●3月分で景気の基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に「上方への局面変化」から上方修正される条件は「原則として3ヵ月以上連続して3ヵ月後方移動平均が上昇かつ当月の前月差の符号がプラス」になることである。3月分は一致CIの前月差が上昇で、3ヵ月後方移動平均は3月分で9ヵ月連続して上昇するので、「改善」への上方修正されると予測する。コロナ禍でも、輸出、生産の好調、雇用の底堅さなどから景気の基調はしっかりしていることを示唆しよう。

 

●3月分の先行DIは88.9%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列がプラス符号に、新規求人数1系列がマイナス符号になるとみた。

 

●3月分の一致DIは87.5%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列がプラス符号に、耐久消費財出荷指数の1系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年3月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2021年4月30日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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