高年齢者雇用安定法の改正で「70歳定年時代の到来」と言われています。そこで気になるのが、現在65歳からの支給が基本となっている年金。働き続けた場合、年金受給額はどうなるのか……見ていきましょう。

年金カットになるから高齢者は仕事を辞めたほうが得!?

高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)の一部が改正され、従業員の希望によって、企業は70歳まで働く場を提供する努力をすることが義務付けられました。

 

内閣府『老後の生活設計と公的年金に関する世論調査』によると、働きたいと希望する年齢で一番多かったのが「61歳~65歳」で30.7%。「その年齢で退職したい理由は?」と尋ねたところ「定年退職の年齢だから」29.2%と最も多く、また定年後も働きたいという人が36.7%もいることから、定年が70歳まで延長されるのであれば働く、という人は増えるでしょう。

 

もちろん同調査では早期退職したいという人も25.7%と4分の1を占めるので、すべての人が定年延長に前向きというわけではありませんが、「定年70歳」は概ね歓迎ムード、といったところでしょうか。

 

ここで議論されるのが「年金はどうなるのか」ということです。現在、通常の年金支給開始は65歳。年金受給開始年齢を遅らせる方法もありますが、「収入があると年金がカットされるから損。仕事は辞めるべき」と主張する人もいて、リタイアの道を選ぶケースも。

 

働くだけ損なんて(※写真はイメージです/PIXTA)
働くだけ損なんて(※写真はイメージです/PIXTA)

 

働きながら年金を受け取ることは……できます。ただ70歳未満の会社員で厚生年金保険に加入している場合や、70歳以上の人が厚生年金保険の適用事業所に働いている場合、老齢厚生年金の額と、給与や賞与の額(=総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる「在職老齢年金制度」があります。

 

この「在職老齢年金制度」65歳未満と65歳以上で計算方法が異なります。

 

まず60歳から65歳未満の場合、60歳台前半の老齢厚生年金を12ヵ月で割った「基本月額」と、「総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割ったもの)」を確認。①~⑤いずれかになります。

 

①基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合
年金支給月額=全額支給

②総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合
年金支給月額=基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

③総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合
年金支給月額=基本月額-総報酬月額相当額÷2

④総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合
年金支給月額=基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

⑤総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合
年金支給月額=基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

 

また2022年4月からは、後述の65歳以上と同様に基準額が「47万円」に引き上げられます。これまで年金を満額もらうために就業を調整した人も、そんな必要はなくなるかもしれません。

 

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