株の世界でも「生き方」が問われます。株式投資で勝つには、どうすればよいのでしょうか? 45年間市場と対峙してきた「投資の鬼」である筆者が解説します。※本連載は石井勝利著『株の鬼100則』(明日香出版社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

75日移動平均線は、株価の「乖離」をチェック

株価チャートの要素には、日々の動きを示すローソク足の他に、「移動平均線」がある。これは、5日線であれば、5日間の平均をつなげていき、25日は25日の期間の平均を、さらに、75日は75日間の平均値をつなげるものだ。

 

チャート上で繰り広げられるローソク足と移動平均線の関係で様々な形が出現し、それを株価動向を読むシグナルととらえて、投資家たちが動く。

 

さて5日線と25日線は割合にポピュラーだが、75日線については、いまいち、その正しい使い方をわかっていない人が多い。

 

75日線は、言うなれば3ヵ月間の株価の動きをとらえた、割に中期の株価の動きだ。この移動平均線が上向きであれば、株価のトレンドは上げ。もし、株価がこの移動平均線を上に突き抜けた時は、強い上げのシグナルとなる。

 

逆にトレンドが上の中で、株価が下を向いた時は「一時的な押し目」と見ることができる。株価は上下しながら、移動平均線との関係で、上に下に乖離しながら、動いていく。

 

75日移動平均線が上がっているのに対して、株価が下に向いて乖離した時は、「押し目」と判断して買い、反発した時は、揺り戻しの買いが入ったと判断して、そのタイミングで利益確定するのが賢明だ(図表1)。

 

チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)
[図表1]6702 富士通 チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

 

5日線や25日線では、明確な乖離状況はわからないが、75日移動平均線ならば、傾向がつかみやすいので、このテクニカルの読み方で大勢に逆らわない株価の位置を読むことができる。

 

ただ、デイトレなど短期の取引には向かず、ある程度、中期の投資向きにはなる。我々個人投資家は、中期でテクニカルを読んで、じっくり勝負するほうが、勝率は上がるだろう。

「長い上ヒゲ」は上値限界のシグナル…利益確定が吉

株価が上げた時に、最大の利益を得るために大切なのは、「上げの限界」をしっかりと読むことだ。

 

当たり前だが、無限に上げる株価、銘柄はない。やがて来るべき「利益確定」のタイミングを逃さず最大利益を確定させることが株で儲ける絶対的なテクニックである。

 

せっかく手持ちの銘柄が上げてきて含み益を得たにもかかわらず、先が読めず高望みをしていれば、やがては利益確定が先行して株価は下向き、売り場を失ってしまう。

 

負け惜しみに「また、戻すだろう」。そんなに株の世界は甘くはない。下げ始めた株価は、我先の利益確定に押されて、含み益がなくなるどころか、マイナスに沈んでしまうのだ。そこで損切りするのは下策だ。


上値のシグナルをしっかりと読めれば、失敗は激減する。そのひとつが「長い上ヒゲ」(図表2)。

 

チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)
[図表2]5440 共栄製鋼 チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

 

長く上に伸びたヒゲは、上げたものの上値では利益確定の圧力が強く、押し戻されたことを示す。ザラ場で、一時的な値が付いたに過ぎない。いわゆる、上値限界を暗示している。

 

この「上ヒゲ」が出たら、欲張らずに素早く利益確定の注文を出し、利益の大小に関わらずいったん手仕舞うことだ。

 

株価はすべて、需給関係で決まる。買いが多い時は、株価は勢い良く上に伸びていく。それが緩慢になれば、上値には売りが待ち構えている。上値では買いは少なく、様子見や利益確定が多くなる。この動きが出た時は、いったん手放すのが賢明というわけだ。

値崩れ直前!「上値での大陰線」が出たら「売り」一択

理由の有無に関わらず、相場にはある日突然、異変がやってくる。

 

猛然と上がっていたのに、「利益確定」の嵐で、急落する。「まだまだ上がる」と考えていたのに、いきなりの「大陰線」。多くの人がこの痛い目に遭っているはずだ。

 

「上値での大陰線」(図表3)。これは間違いなく、天井のシグナルである。問答無用の売り優勢の動きを示す。賢い人は「すぐに売る」という行動が必要だ。

 

チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)
[図表3]9022 JR東海 チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

 

株価はある日、突然に崩れる。心躍る急騰がある代わりに、急落も当たり前にあるのだ。

 

なぜなら、これまで買っていた人も、「売り時」を考えながら、保有しているからである。さらに、すでに述べた「決算売り」もある。それぞれの事情を有して投資しているので、絶好調の時に「ガラ」といわれる値崩れがある。相場の世界は、流れが一気に変わるのだ。

 

株取引を、道路の渡り方にたとえる話がある。青信号では、人が渡り始めるのを一拍遅れて渡り、渡り終えるのは、他人より早く。それが一番安全だというわけだ。

 

周りの様子を見ながら、賢く立ち回る。株の世界でも「生き方」が問われる。最悪の時は、利益が出なくても、損が出ても、突然の異変時には「素早く逃げる」行動が必要だ。そうでないと、生き残れない。ずる賢くあれ。

 

 

石井 勝利

経済評論家

 

 

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