50歳は仕事や家庭に大きな変化を迎えるタイミング。それによって実る人、枯れる人に分かれることになります。人生100年時代の折り返し地点、ここからも輝き続けるためには何を心掛ければ良いのでしょうか。長年人間教育に携わり、稀代のリーダーたちと交わってきた筆者が、メンタリティを軸に解説します。※本連載は松尾一也著『50代から実る人、枯れる人』(海竜社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

50歳は「実りある人生」「枯れた人生」の分かれ目

【50代から枯れる人=自分の人生に関心がない】

 

その年齢でしか見えない風景があります。

 

5歳の頃に、夜のネオン街を見てもなんの魅力も感じません。いつも母親の背中を追いかけていました。

 

20歳の頃には遊びが最大の関心事でレジャー施設に目が奪われます。

 

30歳の頃には、自分の人生の伴侶(パートナー)候補の異性に目がいっています。

 

40歳の頃には同世代の仕事ぶりや暮らしぶりが大いに気になります。

 

そして50歳。社会の風景とのピントが合いだして、やっと様々な実相が見えてくるのです。

 

「なんと人生とはこのような仕組みだったのか…」

 

50歳で初めて世の中がクッキリ見えてきて、愕然とするものです。

 

これは「悟る」ということではなく、「生活」に追われる日々の中で「人生」というものにようやく気づくという感覚です。

 

50歳になると習慣のギアが変わりだすことを否応なく思い知らされます。

 

「そんなに食べたつもりはないのに太りだす」「お酒をたくさんは飲めなくなる」「白髪が増えてくる、髪が薄くなる」「通勤がしんどくなる」「徹夜が出来なくなる」「親の介護や見送る日を経験する」

 

また、手放すものもたくさんある一方で、手に入れるものもあります。

 

「仕事の経験や醍醐味」「心のやすらぎ」「家族や友人のありがたみ」「食べ物や景色の深いあじわい」「生きる意味」

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そうしたなかで「自分」という生き物が実っているのか、それとも枯れつつあるのか、はっきりしてしまう年齢が50歳なのです。

 

今、自分が人生のどんなステージにいるのか、50歳を機に冷静に見つめ直すことが大切です。

生きやすくなるカギは「自分の本音に気づくこと」

【50代から枯れる人=深い思索をしない】

 

あるセミナーで“人は生まれた瞬間、子宮に帰りたい願望がある(胎内回帰願望)”と教わった時、「なるほど!」と快哉(かいさい)を叫ぶ思いがしました。

 

赤ん坊は母親の子宮の羊水に包まれてヌクヌクと過ごしていたはずなのに、急に狭い産道を通らされて、ホントに死ぬような思いでこの世に放りだされます。

 

そして、今度はいきなり肺呼吸を自らでしなくてはならず、いきなり苦難の連続となるわけです。

 

この時、赤ん坊の意識レベルでは当然のことながら、あの温かく安らかな子宮に帰りたい! 帰りたい! 帰りたい! と感じていることでしょう。

 

なんとなく自分の中にもそのような願望があるような気がしました。

 

ある大きな病院の有名な臨床医から聞いた話では、患者の中で一度、危篤状態から幸いにも命を吹き返して、死の淵から生還した人たちの7割近くが同じ体験をした記憶を語るといいます。

 

意識が遠のくなか、お花畑のような明るい光景が見えてきて、多くの人の中で共通の感情が湧いてくる…。「あぁ、やっと帰れる」と。

 

こんな話を聞いていると、やっぱりこの世は苦悩に満ちあふれていて、人は本能的に強い帰巣願望があるのだと感じます。みんなホントは遠い記憶の平安の里に帰りたいのです。

 

人生における苦しみに無自覚にならず、いま自分が感じている潜在的な気持ちに気づいてあげるのも50代として必要なことです。

つらい時ほど「よくがんばってるぞ」という自愛が大切

50代から枯れる人=干からびたままでいる】

 

──ある日の50代のオジサンの場合──

朝の通勤電車の中では、仏頂面した乗客に囲まれて、ちょっと肩が当たっただけでも「チッ」とか舌打ちをされます。

 

会社の会議では、常に数字、成果を求められて「不足」を糾弾され続けます。

 

自宅に帰れば、妻から「子供の塾代」「美容代」「トイレの修繕費」…と連発して請求されます(日頃、立ち食いソバで節約して、欲しいスーツも我慢している身にもなって欲しいものです)。

 

テレビを見ていると、出演している老けたオジサンに(55歳)とテロップが出ていて、「なんと俺と同い年か!」とひっくり返ります。

 

寝る間際に見たネットニュースで政治家、公務員の背任・横領事件が目に飛び込んでは、「他人の金だと思って、コノヤロー!」と憤りたくなります。

──────

 

こうして一日を切り取っただけでも50代のオジサンには色々と疲弊することの連続です。「生きてるだけで精一杯」という言葉がピッタリくるのが50代の隠さざる心境。

 

だからこそ、心がポキッ、ポキッと折れたときには、「よくがんばってるぞ、自分」「心が折れて当然だよ」と深呼吸し、はまり込んでいるつらい状況から客観的に視野を広げられる慈愛のある言葉を自分にかけてあげましょう。

50代以降は「挫折への免疫力」が人生を左右

【50代から枯れる人=挫折への備えがない】

 

人は大きく分けると、

 

●より成長したいと思う向上派

●そんな努力はムダと思う虚無派

 

がいます。

 

どちらのタイプも悩みとともに生きていますが、特に成功・成長を求めている人々こそ、理想と現実の大きなギャップのなかで葛藤に襲われます。

 

向上心がある人ほど、「今日の自分は全然ダメ」「成長のあとがない」と焦り、つらいのです。

 

人は成功を求めて、日々頑張るわけですが、頑張っている人こそ、その成果が得られず徒労に終わる苦しみを感じます。

 

そして、「もうダメ!」「出来ない」となかなか言えないつらさを抱え、次の理想の景色を探し求めて、悩みもがく生き物なのです。

 

エリートできた人は自分の能力や成績が評価されない時点でショックを受けます。早くに管理職になった人は遅れてきた人に抜かされると大きく落ち込みます。

 

役員やトップになった人はもう自分がお役御免になったと知った時には絶望感に襲われます。

 

50代は今までトントン拍子で来た人こそ直面する人生の断崖なのです。「挫折免疫力」はありますか?

 

 

松尾 一也

株式会社ルネッサンス・アイズ

 

 

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