不動産を購入する際、その費用を夫婦や親子など、共同で拠出するケースがありますが、その場合、法務局への登記は、拠出した金額の割合に応じた共有持分により申請する必要があります。しかし共有持分の登記が適正に行われていなかったり、お金を出していない人の名義が入っていたりする場合も。そのような場合の税務上の取扱いや対応方法について、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、事例を織り交ぜながら解説していきます。

「贈与税が課税されない」救済的な取扱いについて

贈与!?何それ(※写真はイメージです/PIXTA)
贈与!?何それ(※写真はイメージです/PIXTA)

 

それでは、事例のようなケースにおいては贈与税の課税が免れないのかというと、そうではなく、《個別通達》「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」として以下の定めがあります。

 

すなわち、誤った内容で登記をしてしまったとしても、税務署から贈与税の課税処分を受ける前などに名義を正しく変更した場合には贈与はなかったものとして課税されないということです。

 

そのため、本事例では建物の正しい持分である「Aさん2/3、Bさん1/3」という内容で所有権更正登記を行い、かつ、建物の評価額の2/3相当額をAさんの相続財産として相続税の申告を行いました。

 

相続税申告にあたっては、亡くなった方の名義だけでなく相続人等の名義の財産にも注意を払う必要性を再認識できる事案でした。

 

「通達5(一部省略)」

 

他人名義により不動産、船舶、自動車又は有価証券の取得、建築又は建造の登記等をしたことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により確認できるときは、これらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正の日前にこれらの財産の名義を取得者等の名義とした場合に限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱う。

 

自己の有していた不動産、船舶、自動車又は有価証券の名義を他の者の名義に名義変更の登記等をした場合において、それが過誤に基づき、又は軽率に行われた場合においても、また同様とする。

共有持分を拠出割合と異なる割合にしたいときは

相続税対策など何か理由があってお金を出していない人の名義を入れたい場合もあると思いますが、以下の贈与に関する制度を使うことでそれは可能になります。

 

「贈与税の配偶者控除」
婚姻期間が20年以上である夫婦間において居住用財産や居住用財産を取得するための金銭を贈与した場合に2,000万円まで非課税になる制度

 

「直系尊属から住宅等資金の贈与を受けた場合の非課税」
所定の要件を満たせば、父母や祖父母から贈与を受けた住宅取得資金について一定限度額まで非課税になる制度


※令和2年4月1日から令和3年12月31日に契約した消費税率10%が適用される住宅用家屋の新築等の非課税限度額
省エネ住宅・・・1,500万円
それ以外・・・1,000万円 

 

「相続時精算課税」
60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫へ財産(住宅資金に限らず)を贈与した場合に通算で2,500万円まで贈与税がかからない制度。ただし、贈与した財産は将来贈与者が死亡した際に贈与者の相続財産となる。

 

なお、「直系尊属から住宅等資金の贈与を受けた場合の非課税」と「相続時精算課税」については贈与税額が0円でも贈与税の申告期間(贈与をした年の翌年2月1日~3月15日)に贈与税の申告手続きをしなければ適用を受けることができません(贈与税の配偶者控除は期限後でも可)。そのため、上記事例では相続発生時点で贈与税の申告期限である平成31年3月15日を過ぎてしまっているのでこれらの制度は利用できない状況となっていました。

 

■まとめ

不動産を購入すると、その後税務署から税金の申告の必要性や不動産の名義が適正であるかなどを確認し、所有者に必要な手続きを促す目的で「お買いになった資産の購入価額などについてのお尋ね」という文書が届くことがあります。送り先の基準は不明ですがすべての人に送られるものではないため上記事例のように見落とされてしまっているケースは少なくありません。

 

ただし、見落とされているからといって安心してそのままで良いかと考えてしまうのは早計です。税務上のリスクがあることはもちろん、将来相続のトラブルにつながる可能性もあるからです。

 

上記事例と同じような状況に置かれてはいないかを確認し、必要であればしかるべき手続きを行う、あるいは専門家に相談することも検討してください。

 

 

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