アフターコロナ…世の中に必要とされる企業、捨てられる企業

イノベーションとは社会課題の解決によって実現するものです。しかし現在、社会課題がたくさんあるにもかかわらずイノベーションは停滞しています。かつては「普遍性の高い問題」が多く、解決すると利益が大きいため企業は取り組んできたのですが、それらが解決され、今ではマイノリティの抱える問題のような普遍性の低い課題が多くなったのです。今後、社会から必要とされるのはどのような存在なのか見ていきましょう。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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「経済合理性」の外側にある問題が残存

現実に社会にはまだまだ解決すべき課題がたくさんあるにもかかわらず、なぜイノベーションは停滞しているのでしょうか?イノベーションは言うまでもなく、社会が抱える課題の解決によって実現します。ということは、社会に課題がある限り、イノベーションに対する要請が尽きることはないはずです。

 

ここで浮かび上がってくるのが「経済合理性」というキーワードです。

 

イノベーションは「経済合理性」と「技術的合理性」という2つの制約条件のなかで課題を見つけ、それを解くというゲームです。私たちの社会はすでに数百年にわたってこのゲームを続けているわけですが、時間が経てば経つほど、2つの合理性を満たす解を見いだすことが難しくなるという宿命を背負っていることもまた認めざるを得ません。ここでは、この「経済合理性の限界」がどのようにして確定するのかについて考察してみましょう。

 

図表を確認してください。

 

[図表1]「問題の普遍性」と「問題の難易度」のマトリックス

 

これは社会に存在する問題を「普遍性」と「難易度」のマトリックスで整理したものです。世界に存在する問題をすべてこのマトリックスに投げ込んで整理すると考えてみてください。横軸の普遍性とは「その問題を抱えている人の量」を表します。つまり「普遍性が高い問題」ということは「多くの人が悩んでいる問題」ということになりますし、「普遍性が低い問題」ということは「ごく一部の人が悩んでいる問題」ということになります。

 

一方で、縦軸の難易度とは「その問題を解くのに必要な資源の量」を表します。「難易度の高い問題」ということは「解決するのに人・モノ・金といった資源がたくさんいる」ということになりますし、「難易度の低い問題」ということは「解決するのに人・モノ・金といった資源が少なくていい」ということを表します。

 

さて、ビジネスの本質的役割を「社会が抱える問題の解決」だと考えた場合、みなさんであれば、このマトリックスのどの部分から取り組みますか?そう、普通に経済合理性を考えればAのセグメントから手をつけるはずです。なぜならこの領域がもっとも利益率が高いと考えられるからです。

 

「問題の普遍性が高い」ということは、その問題を抱えている人が相対的にたくさんいる、つまり「市場が大きい」ということです。一方で「問題の難易度が低い」ということは、問題解決にかかる労力が相対的に小さい、つまり「投資が少ない」ということです。

 

資本は「水が低いところを求めて集まる」のと同様に、利益率の高いところを求めて集まりますから、Aの領域に取り組む人には他の領域に取り組む人よりも資本が集まりやすいことになります。かつてのように資本が希少だった時代において、この差は決定的であったと思われます。

 

金利がすでにほぼゼロになってしまった現在、資本は過剰供給の状況に陥っており、現在ではむしろ投資機会がボトルネックになっていますが、こんな事態は歴史上、類例のないことで、「長い近代」を形成する2500年のあいだ、資本は常に希少でした。だからこそ、この「希少な資本」を誰が主体となって分配するのかという論点について、資本主義と共産主義のあいだで激しい議論がなされたわけです。

 

今日、共産主義がイデオロギーとして衰退してしまったのは、イデオロギーそのものの魅力がなくなったというよりも、そのイデオロギーを成立させていた「資本の希少性」という制約条件が解除されてしまったことで、思想そのものの意義が溶解してしまったという点が大きいと思います。

 

ライプニッツ 代表 独立研究者
著作家
パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。神奈川県葉山町に在住。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。

電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。

(的野 弘路=撮影)

著者紹介

連載日本人はコロナ後の世界をどう生きるべきか

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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