遺言書や遺産は、ときに子どもへ恐ろしい負担を強いることがあります。本記事では、岡野雄志税理士事務所所長の岡野雄志氏が、遺言書や遺産のせいでトラブルになった事例を紹介します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

「相続放棄しかない」…妻から強烈な一言

多くの社長が住みたいと思う都心の高級住宅街にある実家。誰もが羨むような豪邸を相続したというのに、なぜMさんは困惑したのでしょう? それは、父親が遺書に残した「代償金」にあります。

 

「代償金」とは、相続人の一人または数人が現物で遺産相続した場合、相続した人がその現物の代償として、別の財産で他の相続人に対して支払うものです。これを「代償分割」といい、Mさんの実家のようにそのままでは分けにくい財産を相続したとき、遺産分割に選択される方法の一つとなります。

 

「代償金」は現金が一般的ですが、会社員であるMさんには豪邸に相当する金額を弟や妹に分けて払えるほど蓄えがありません。しかも、父親は意地の悪いことに、旅行や自宅のリフォーム、生前の寄付などで、代償金に満たない現金しか残してくれませんでした。

 

固定資産税を考えても、この先、Mさんが実家を保有・維持し続けられるとは思えません。Mさんは相続放棄することさえ考えました。しかし、これにはMさんの妻が猛反対。「舅や姑の介護にこんなに苦労したのに」と泣かれ、「離婚する」とまでいい出されました。

 

そこで、Mさんが次に考えたのが、「共有分割」。実家を弟や妹と共有名義にして、3人で所有する方法です。固定資産税の負担も軽くなります。これには、実家に愛着のある妹は賛成でしたが、弟が大反対。「誰かが売却したくなったら、絶対揉める」というのです。

 

仲がよかったはずの弟や妹まで、議論を始めてしまいました。今まで「兄は長男だから」と、実家に住み続ける自分を許容してくれていた弟と妹の本音も露呈しました。遺産分割協議が長引くことを覚悟したMさんは、次の手段、「換価分割」を決心しました。

 

「換価分割」とは、遺産を売却して現金化し、相続人に分配する方法です。ところが、長引く景気低迷に新型コロナ不況が追い打ちをかけ、何億円もする実家はなかなか買い手が現れません。内覧者はあるものの、「豪邸を一目見たい」冷やかしのようなお客様ばかり。

 

そんな自宅への来訪者をたびたび迎えることに、Mさんの家族も次第に疲れ果ててきました。不動産仲介業者には「一人の購入者さえ見つかればいいのだから、辛抱強く続けましょう」と励まされましたが、「本当に売れるのだろうか?」と不安は募るばかりです。

 

売り出し中の実家に内覧者を迎えるため、M家はその日も家族総出で片付けしていました。広い豪邸は大変ですが、1円でも多くのお金を必要としている今、清掃業者や整理業者に費用をかける訳にもいきません。そのとき、父親の寝室を担当したMさんが、「あっ」と声をあげました。

 

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