株の売買で成功するのは簡単ではありません。ここでは実際のローソク足を参考にしながら、利益確定で逃げる「売り時」を解説します。身銭を切って45年間市場と対峙してきた筆者が、老練の技を大公開。※本連載は、石井勝利氏の著書『株価チャートの鬼100則』(明日香出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

上げていても「放れ大陰線」が出たら即撤退

株価が天井を付けて、落ちてくるローソク足の並び方にも、様々なものがある。トレードでは、それを頭に叩き込んで、しっかり上げたところで利益確定することが勝率アップのカギである。

 

図表1にあげた銘柄の動きは、下値から持ち合い抜けをして、窓開けで上げたところで、大きく値が飛び、寄り付き高値で、その後に売られて、大陰線となった。

 

一見、窓開けの動きは強そうに見えるが、それが間違いのもと。大陰線になった時点で、仕込んだ手持ちの銘柄はその陰線のうちに逃げなければならない。

 

寄り天(寄り付きが高く、そこから下げる状態)になった時点で「売り逃げ」を考えるべきである。さもないと、だらだらの下げになり、含み益がなくなるどころか、含み損になりかねない。

 

チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)
[図表1]9889 JBCCホールディングス チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

 

[図表2]「放れ大陰線」が出れば限界

 

注目すべきは、出来高だ。急増の場面が1回しかなく、地道に人気化しないで、材料優先、噂優先で盛り上がっていたことがわかる。

 

また取引時には、前日までの日足チャートの形や値と絡めて、5分足チャートを見て欲しい。日足のローソク足が描かれるのは1日の取引後。しかし大陰線が形成されつつあることを頭に描けると、勝率が高まるだろう。

 

こうした動きは小型の銘柄に多いので、小型を好む個人投資家は用心しなければならない。急激に上げた後には、急落のリスクがあるのだ。

「買っても買っても含み損」になる天井の形

下値から徐々に上げてきた株価も、いつかは天井を付ける。大きく上げたり、小さく上げたり、時には陰線で足踏みしながら、ゆっくり上げて行く。

 

急騰・急落がなく、割合に地道な上げ方をする銘柄は、安心できる。急に上げないので、いらいらするかもしれないが、じっくりと上げを楽しみたい。その代わり、この形の銘柄の癖として、下げる時も、ジワリジワリとなりやすい。

 

この手のローソク足の集合には、シグナルらしい特徴はない。かろうじて言えるのは、上げの時は陽線が多く、陰線が少ないことぐらいか。

 

下げる時は逆で、陰線が多い。この傾向が出てきたならば、「また戻すだろう」などという希望的な観測を抱かないことだ。傾向に気付いた時点で利益確定をしよう。

 

陰線が多く長い。陽線が短く細かい。このリズムは、買っても買っても含み損になる。

 

特に高値でつかんでしまった人が「ナンピン買い下がり」を行っても、含み損が拡大するばかりで、ついには資金が枯渇して、ギブアップとなる。

 

ナンピンは、むやみやたらとするものではなく、失敗に終わる例が多いので、ご用心である。もしこの形の天井を付けて、含み損が発生した時は、「天井圏で買ってしまった」と判断して、サッサと損切撤退するのが、得策である。

 

[図表3]「坊主頭型」のなだらかな天井を見極める

 

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[図表4]9613 NTTデータ チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

すごい「売りシグナル」、上ヒゲ陰線

上ヒゲというのは、株価に対する「力関係」を明確に表している。株価がジワジワでも、急激であっても、長〜い上ヒゲが出たら、要注意である。

 

人気が出てきて、高く買われたものの、上値では手じまいの売りが待ち構えていて、一気に売られてしまった。残念な足である。

 

中でも「上ヒゲ陰線」(図表5)は、極めて典型的な「弱いローソク足」の代表である。

 

[図表5]上げの後の長い「上ヒゲ陰線」は限界


 

人気化して、買われて、上に行ったが、利益確定する人が多く、売りに押し戻されてしまった。始値よりも終値の方が安くなった。

 

しかも、ヒゲがあるように、すっ飛び高値にまで買われたが、その後には急落して、前の日やその前の日の株価よりも安くなってしまった。

 

この株価の動きは、明らかな「天井のシグナル」である。利益が出ている人も、もちろん、含み損の人も、逃げなくてはならない。

 

チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)
[図表6]2267 ヤクルト本社 チャート提供:「みんなの株式」(https://minkabu.jp)

 

上ヒゲ陰線がいかに、すごい「売りシグナル」であるかは、その次の足が大きく窓開けで下に放れて、出ていることからもわかる。

 

この足が上値に出れば、強烈な上値、撤退のシグナルであり、甘く見たら大失敗する。危険なので、絶対に覚えておきたい、「撤退」のシグナル。または、信用取引をする人には絶好の「売り建て」のシグナルともなるのだ。

 

 

石井 勝利

経済評論家

 

 

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