我が子ではないけれど「財産を遺したい」「事業を継いでほしい」などと考えた際、真っ先に浮かぶ方法が遺言です。相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士は「さらに養子縁組を合わせると、税務上の恩恵を受けることができる」といいますが、そこには思わぬ落とし穴も。今回は「養子縁組による恩恵と注意点」について解説していきます。

何人でも「養子」に入れられるのか?

このような法定相続人の増加による相続税の減額効果に着目し、養子縁組を複数人との間で行うことで、過去、行き過ぎた租税回避行為が行われていたようです。そこで、昭和63年の相続税法改正により、「相続税の計算を行う際の」法定相続人の数に含める養子の数は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、被相続人に実子がいない場合には2人までと制限されることとなりました。

 

「実子がいる場合は1人まで」、「実子がいない場合には2人まで」というのは、あくまでも相続税の計算を行うに当たっての制限ですので、民法上の養子縁組の効力や養子の相続人としての地位とは関係ありません。3人以上と養子縁組すること自体が、できないという訳ではありません。養子縁組をする必要があり、当事者の意思があれば可能です。

 

また、たとえ1人または2人の養子縁組であっても、相続税の負担を不当に減少させる結果となると税務署長が認める時は、これを否認して、相続税額を更正決定できるという「養子の数の否認規定」も設けられています。

 

相続税法 第63条 相続人の数に算入される養子の数の否認

第15条第2項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算することができる。

 

平成29年1月の最高裁で、「節税目的の養子縁組を認める」という判決があったので、誤解されている方々もいるかもしれませんが、この第63条の規定が無くなった訳ではありません。むやみやたらな養子縁組を最高裁が公認した、という訳ではありませんので、注意が必要です。平成29年1月の判決は、「節税目的だからと言って、そのことだけで即、養子縁組の意思が無かったとは言えない」と結論付けただけです。節税の動機と養子縁組の意思は併存しうる、ということです。

 

税法でよく見かける微妙な文言が第63条にもありまして、「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」とはいったい? という疑問が生じます。

 

条文上に明記されている訳ではありませんが、相続税の負担の軽減以外に養子縁組の目的が見当たらないような場合には、否認される可能性も出てくるかもしれません。否認するための立証責任は課税庁にありますが、現実的には課税庁側が立証することは困難かなとは思いますが。

 

もちろん、縁組や届出の意思を欠いている養子縁組は、民法上も無効ですので、その場合はそもそもこの否認という論点にすら到達しません。

贈与税の特例の対象者にもなる

養子になりますと、相続税だけではなく、贈与税で直系卑属(子、孫)しか認められないような特例も、もちろん適用可能となります。

 

年齢にもよりますが、具体的には、相続時精算課税贈与、住宅取得資金贈与、教育資金一括贈与、結婚・子育て資金一括贈与、暦年贈与の特例税率などです。

養子縁組はトラブルに繋がりがち…細心の注意が必要

以上のように、将来的に法定相続人以外に財産を渡したい場合には、養子縁組をすることは税務上のメリットが大きいように見えます。しかし、いわゆる相続対策を行う上で、税金対策だけに目を向けてしまうと、大きな落とし穴が待っていることも珍しくありません。

 

後から養子縁組の事実を知った関係者(他の実子など)が不満や不安を持つことが無いように、事前に縁組の意思や理由・目的などを知らせておくといった配慮も必要でしょう。また、養子縁組さえすれば税金が安くなると思っていたのに、いざ蓋を開けてみたら高くなってしまった(孫養子など)ということも無いように、きちんと専門家への相談もした上で実行することをお勧めします。

 

 

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