ロシア中銀の利上げは良い利上げか

ロシア中銀は2018年9月以来となる利上げを実施しました。今回、そして18年の利上げでは市場の据置予想に先んじて、ロシア中銀はインフレ率上昇の抑制に向け利上げを行っています。前回利上げをした18年の経済成長率はプラス2%台を維持していましたが、今回はプラスに転じるのはもう少し先と思われ、インフレ率の上昇で利上げを選択したと見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ロシア中銀:インフレ率上昇懸念を背景に市場予想に先んじて利上げ

ロシア中央銀行は2021年3月19日、政策金利の1週間物レポ金利を4.5%と、従来の4.25%から引き上げました(図表1参照)。同中銀の利上げは18年以来です。

 

日次、期間:2019年3月24日~2021年3月24日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ロシアルーブル(対ドル)と政策金利の推移 日次、期間:2019年3月24日~2021年3月24日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

市場では利上げ予想は少数派で大半は据え置きを見込んでいました。ロシア中銀は声明文で、実際のインフレとインフレ期待の動きを考慮し、中立的な金融政策に回帰する方針を示し、追加利上げの可能性を示唆しました。

どこに注目すべきか:市場予想、インフレ率、ルーブル安、銀行

ロシア中銀は2018年9月以来となる利上げを実施しました。今回、そして18年の利上げでは市場の据置予想に先んじて、ロシア中銀はインフレ率上昇の抑制に向け利上げを行っています(図表2参照)。前回利上げをした18年の経済成長率はプラス2%台を維持していましたが、今回はプラスに転じるのはもう少し先と思われ、インフレ率の上昇で利上げを選択したと見られます。
 

月次、期間:2016年2月~2021年2月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

[図表2]ロシアの消費者物価指数(CPI)変化率の推移 月次、期間:2016年2月~2021年2月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

最初にお断りをすると、ロシア中銀が市場予想に反して利上げをしたと述べていますが、これはロシア中銀の情報発信が悪いという意味ではありません。むしろ、最近のロシア中銀は情報提供を改善している印象です。また、ロシア中銀は事前に(今思えば)利上げを示唆するようなコメントをしており、利上げ自体に違和感はない印象です。

 

それでも市場が今回の利上げ予想に踏み込みにくかったのはロシアが依然マイナスの成長であるからと見られます。20年7-9月期は前年同期比マイナス3.4%であるうえ、4月2日に公表予定の10-12月期もマイナス成長予想です。プラス成長に転じるのは21年4-6月期の成長率が公表予定である8月迄待つ必要がありそうです。

 

資源価格回復を背景にロシアの年間成長率はプラスが予想されていることから、実感としてプラス成長は早めに察知する可能性はありますが、現時点では困難と思われます。

 

このような中でロシア中銀が利上げに追い込まれたのは消費者物価指数(CPI)の上昇です(図表2参照)。CPIは前年比で21年2月が5.7%と、18年同様にインフレ目標を超えています(図表2参照)。米国との関係悪化など政治的不安もありルーブルの動向は不安定です。これ以上景気回復を確かめる余裕が無かったとも見られます。

 

先進国ではまだ先のことながら、経済正常化から将来の利上げが意識され始めています。恐らく利上げが早いと思われるのは同じ資源国のノルウェーです。3月の金融政策会合で利上げ想定時期を21年後半に前倒ししました。ノルウェーは昨年後半から前期比ベースでプラス成長に転じています。

 

一方、ロシアの場合、経済状況は利上げの準備が出来ていないように見られます。例えば、先進国では金利が上がると収益が改善するとして銀行株セクターのパフォーマンスが改善することがあります。しかし格付け会社のレポートなどを見てもロシアの銀行は十分なマージンを見込みにくく、収益は悪化する可能性があるとの見通しが示されています。今回の利上げは、景気回復を伴わない悪い利上げなのではと見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ロシア中銀の利上げは良い利上げか』を参照)。

 

(2021年3月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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