こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

八歳のとき紙に書いたプログラム

仮に風船が1/2の場所に置かれているとしましょう。だいたい0と1の真ん中です。そこで5/10と打ち込んでEnter キーを押すとダーツが飛び出します。このダーツが風船に命中すれば、打ち込んだ数字が正解だったことがわかります。つまり、ダーツが風船に命中することで、5/10とは0と1の真ん中、つまり1/2と同じであることを理解することができるのです。

 

仮に5/10と打ち込んでダーツが風船に命中しなければ、風船は0と1の真ん中にはないことになります。そこで、どこにあるのかを確かめるために、6/10と打ち込んでみます。6/10でもダーツが当たらなければ、風船は5/10と6/10の中間にあることがわかります。

 

ただ、分数は分母も分子も整数でなければなりませんから、5.5/10というのはダメです。そこでまた考えて、では11/20ならどうかと思いついて打ち込むと、ダーツが風船に命中します。だから、この位置は11/20であるとわかるわけです。

 

私が作ったのは、このような双方向的なやり方で分数を理解させるプログラムでした。私はこれを弟のために書いてあげたのですが、当時は似たような学習のためのプログラムをたくさん書いていました。そのときに使っていたパソコンは、父が勤務していた新聞社で使われていないものを持ってきてくれましたものです。

 

八歳のとき、私は紙にプログラムを書いていました。だから「パソコンがなければプログラミングができないというわけではない」ことをずっと強調してきました。紙にプログラムを書くだけでも、プログラミング思考を養うことはできるのです。

 

私がプログラミングに夢中になった理由は、二つあります。

 

一つは、私は数学に大変興味があったものの、計算そのものには関心がありませんでした。計算はつまらなくて面倒だったので、パソコンが代わりに行ってくれれば数学の部分に集中して取り組めると考えました。つまり、「労力の節約」が一つの理由です。

 

二つ目は、自分が考えたプログラムを自分一人だけのものに留めておかず、「他の人とシェアしたい」と考えたことです。たとえば、自分で何かの計算をしても、そのプロセスは自分だけしか知りませんし、それを友達とシェアしたいと思っても簡単ではありません。

 

しかし、誰かが「分数についての概念を学びたい」と思ったときに私が作ったプログラムを使えば、多くの人が遊び感覚で、それを学ぶことができます。言い換えれば、このプログラムはより多く人たちに使ってもらうことができるのです。私はその点に魅力を感じました。

 

この二つの理由から、私はプログラミングに夢中になったのです。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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