認知症はどのようにして起こるのか?
脳には神経細胞と呼ばれる細胞があり、これらが影響し合って、お互いに刺激を与えることで、ネットワークが形成されて脳の機能を発揮しています。人間の脳には多いときでこの神経細胞が140億個ありますが、20歳を過ぎる頃から、1日に10万個ずつ減少していくといわれています。
そのため、ある程度の年齢になると記憶力が緩やかに低下して「覚えられない」、「思い出せない」ことが出てきますが、これは誰の脳にも起こる加齢による自然な変化です。
一方、認知症は、脳細胞に何らかの異変が起きることで、脳がうまく機能しなくなって起こります。例えばアルツハイマー型の認知症は、脳の中に「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれる蛋白質が蓄積することで発症することが分かってきました。
しかし脳には、一部の神経細胞が機能しなくなっても、周りの神経細胞がその機能を補う「代償機能」が備わっているため、すぐに発症するわけではありません。
それでも長年(20年以上)にわたって、大脳皮質連合野や海馬(かいば)領域を中心に、アミロイドβ蛋白やリン酸化タウ蛋白の蓄積による神経変性が進行し、神経細胞の死滅およびそれら神経細胞間のネットワークが壊れて機能しなくなり、徐々に脳が萎縮します(図表1)。
アルツハイマー型認知症の最初の変化をアミロイドβ蛋白蓄積(後にタウ蛋白も加わる)とする説を「アミロイド仮説」といいます。(ただし、PET検査などから幾つかの疑問が指摘されています)。
特に側頭葉の深部にある大脳辺縁系の「海馬(hippocampus:ヒポカンプス)」が神経細胞脱落により萎縮すると、記憶の障害が著しくなります。海馬は小指の大きさで、タツノオトシゴの形に似ているとされています。また、雄羊の角にも似ていることから別名として「アンモン角(Ammonʼs horn)」とも呼ばれます(エジプト神アンモンは羊の角を持っています)。
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