病院嫌いの認知症妻…「この前な」診察促した、夫の奇跡の一言

なぜ、認知症なんかになるんだ――。物を失くす、使えなくなる、物忘れが増える……。刻々と変わりゆく妻の様⼦に⼾惑う⽇々について、棚橋正夫氏は書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』で記しています。本記事では、「認知症を発症したかもしれない」と感じるきっかけとなった、生活の変化について解説します。

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妻は認知症なんだろうか?心配な言動が増え…

私は、なるべく早く病院に連れて行き診断結果を知りたかった。

 

妻は、昔から病院は好きではなかった。また、納得しないと動かない性格でもあった。痛みがあれば病院に連れて行けるが、認知症は痛みも自覚症状もない。「自分は、どこも悪くない」と思っている。

 

行くところは、妻には受け入れがたいであろう心療内科か精神科だ。どう説明すべきか迷った。

 

「この頃、お前の言動がおかしいから、一度病院に行こうか」とか、「最近、もの忘れがひどいから、認知症かも知れない。病院で先生に診てもらおう」とか、ストレートに理屈で説得しようとすれば、恐らく反発されて病院に行くのを強く拒否するだろうと思った。

 

上手な説明の仕方はないだろうか、どう切り出せば良いのか正直悩んでいた。ゴルフの友達に、昔、グループホーム(認知症患者の共同生活施設)に勤務していた人がいた。その人に相談してみた。

 

「棚橋さんが言われる通りです。ストレートに言うと、奥さんは、プライドを傷つけられ、自分は非難されたと思い、不安がつのり反発します。また、自分の弱みを見せまいとして頑固にもなります。そうなると大変です。言い方として、いつまでも元気でいてほしいから、一度、体調を診てもらいに健康診断に一緒に行こうと言えばいいでしょう。認知症の人は、心を許した人は素直に受け入れてくれます。棚橋さんは、奥さんに信頼されているようですから、きっと、うまくいくと思いますよ」とアドバイスしてくれた。相談して良かった。持つべきものは友、を実感した。

 

その後、妻が、くつろぐ機会を伺っていた。ある日の午後、妻がテレビドラマを見終わりお皿にお菓子を入れる音がした。

 

「お父さん。コーヒー飲む」と声を掛けてきた。私は、パソコンの手を止めて台所に行った。絶好のチャンスだ。

 

コーヒーが入った。

「お父さんが、倒れたら私、よう面倒みんわ」

「このコーヒーいい香りがするね。いつも上手に作ってくれるわ。美味しいわ」と飲みながら言った。

 

「おいしいやろ。このインスタントコーヒー、私一番好きなん」と笑顔で応えた。雑談をしながらタイミングを見計らった。そして切り出した。

 

「この前な、ゴルフの友達の奥さんが、ご主人とお酒を飲んでいたとき、急に倒れて救急車で運ばれたけれど、脳梗塞でそのまま寝たきりになられたそうや」

 

「そう。寝たきりになられたの。可哀想やね。ご主人も大変や」と驚いた様子だった。

 

「奥さんは、僕たちと同じ76歳だそうだ。女性なのにお酒好きで高血圧だったそうだよ。それだけに、ご主人が一番困っていたんだって。棚橋さんたちも、高齢なので早めに健康診断を受けた方が良いと、アドバイスしてもらったよ」

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「年取ると、どこか身体が悪くなるのやね」と言った。

 

「そうや。どっちが倒れても大変や。既に病気にかかっているかもしれないから、早めに健康診断をした方が良い。老老介護は、すごく大変やからな。いつまでもお互いに元気でいたいから、一度、お父さんと健康診断に行かへんか。新田辺にいいクリニックがあると聞いてるので行こか」と言った。

 

「お父さんが、倒れたら私、よう面倒みんわ」

 

「そうや。お前大変やで。逆にお前が倒れても、お父さんが大変や。来週にでも二人で行こか」

 

「うん。お父さんと一緒やったら行くわ」と言ってくれた。内心ホッとして胸をなで下ろした。

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棚橋 正夫
1936(昭和11)年、神戸生まれの京都育ち。1957年松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社。音響部門の技術営業などに携わる。定年後、アマチュア無線、ゴルフなど趣味の道を楽しむ。

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著者紹介

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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