医療法人における「役員」の内訳
医療法人制度において役員とされる理事や監事には、医療法にそれぞれ役割や要件が定められています。また、理事の中からは理事長が選定され、医療法人の唯一の代表権を持つこととされています。
今回は、その理事長、理事、監事などの役員について、医療法人における最高意思決定機関を構成する社員や医療機関の管理者などとの関係を踏まえてご説明します。
理事、理事長、監事…「なれる人」と「役割」を確認
【理事】
理事とは医療法46条に定められている医療法人の役員を指します。理事はその医療法人の社員総会で選任され、理事会を構成して医療法人の業務執行を行うことになります。
理事は原則3名以上選任する必要がありますが、例外的に理事を2名以下とする認可を行政から受けた場合には、その限りではありません。また、理事は社員でなければならないと誤解されている方も多いですが、理事は必ずしも社員である必要はありません。ただし、定款に理事は社員から選任する旨を定めている場合はその定款に従うことになります。
加えて、医療機関としての管理者は理事である必要があり、管理者交代や、分院設置時には新たな理事の追加を検討する必要があります。理事となるための年齢要件は医療法には記載されていませんが、各管轄行政の指導では18歳以上が望ましいとされるケースが多いようです。なお、理事となれるのは自然人のみであり、法人は理事に就任できません。
また、医療法人と関係のある営利法人の役職員が医療法人の役員として参画することは原則禁止されているので同族経営の医療法人の場合には特に注意が必要です。
【理事長】
理事長とは理事会において理事の中から選定され、医療法人の代表権を有します。株式会社においては代表取締役を2名にするなどして、代表権を1名だけに限定しないことも可能ですが、医療法人においては例外なく1名の理事長を選定し、その者が代表権を持つことになります。
また、理事長となるための要件ですが、理事の要件に加え、原則、医師または歯科医師である必要があります。ただし、例外規定として理事長死亡などの緊急時や特定医療法人、社会医療法人である場合、特別に各管轄行政が認めた場合には医師、歯科医師でなくとも理事長になれる場合があります。
【監事】
監事は株式会社における監査役に対応する役割を持ちます。具体的には医療法人の業務・財産の監査、監査報告書の作成、不正等があった場合の報告などを行います。
監事は各医療法人に最低1名必要とされており、また、監事に就任するためには要件があり、医療法人の利害関係者でないことや、理事長の親族でないことなどが挙げられます。ただ、これらは各管轄行政により指導内容や要件が若干異なるため、事前の確認を行っておくことをおすすめします。
監事については平成19年4月施行の第五次医療法改正により責任が明確化され、今後も監事の役割についてはより明確に、そして、より厳格に位置付けられ、各管轄行政から指導がなされるものと予想されます。過去には名ばかり監事も多く存在していたことも事実ですが、そのような医療法人は今一度監事の見直しを実施すべきと思われます。
最近では平成26年6月に総務省から医療法人を管轄する厚生労働省に対して、事業報告書、財務諸表等の届出状況や監事の監査状況について適正に行われていない実態について是正するよう勧告が行われており、監事を取り巻く指導は今後より一層強化されることが想定されます。
中村 慎吾
税理士法人名南経営 医業経営支援部 担当部長
株式会社名南メディケアコンサルティング 部長