タンス預金の増加で「相続税の税務調査」は…
単純計算すると、2015年12月時点で、国民一人当たりの「現金・預金」は750万円ほどで、そのうち「タンス預金」は68万円ほどでした。それが2020年12月では、「現金・預金」は870万円に増え、「タンス預金」も83万円ほどに。
1人当たり、この5年あまりで100万円以上も資産が増え、手元のお金も15万円ほど増えたことになりますが、「そんな実感はない!」という人ばかりでしょうか。お金が集まる人は限られているようです。
そのようなタンス預金ですが、今後、ますます増えるのはないか、といわれています。その理由としてあげられるのが、前出のとおり金融機関に預けるメリットがないこと、そして「マイナンバーカード」です。
今回の新型コロナウイルスの給付金の際にも色々と話題に上がりましたが、今後、政府はマイナンバーカードの普及に力を入れようとしています。行政サービスが円滑に受けられるようになりますので、私たちにとってはメリットも大きいのですが、預貯金と紐づくことを嫌う人たちが一定数いて、タンス預金の傾向が強まるというのです。
そこで論点になるのが、「タンス預金は税務署に見つかるのか?」ということです。国税庁の研究機関である税務大学校では以下のように論じられています。
出所:国税庁『相続税の課税財産に関する一考察-新制度創設に係る検討-』より
やはり、タンス預金の把握は難易度が高く、そのため「マイナンバーカードを活用しよう!」という流れもあるのでしょう。なかには「プロでさえタンス預金の把握が難しいというのであれば、積極的にタンス預金をしよう」と悪だくみをする人もいるでしょうが、税金のプロである税理士は「タンス預金での誤魔化しはやめておけ」といい、誤魔化しの多くが明るみに出て、追徴課税になっています。
国税庁の調べでは、税務調査が入ると8割以上の確率で誤りや漏れが見つかり、追徴課税されているといいます。
税務調査では、家計の支出入の状況と相続税の申告に怪しい点はないか、家族の預貯金が被相続人の財産になっていないか等、細かくチェックされます。ちょっとした質問に対し、少しでも齟齬を見つけたものなら……逃れることはできません。
そもそも追徴課税が8割という状況を顧みると、無作為に相続税の税務調査に入るわけではなく、ある程度あたりをつけて調査を実施していると考えられるでしょう。追徴課税のリスクを考えるなら、誤魔化しのためのタンス預金は、あまりにリスクが高く、やめておいたほうが得策だといえるでしょう。
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