相続トラブル防止のために…遺産は残しません
とにかく相続は揉める。そんなイメージが強いためか、「トラブルが起きないためにどうしたらいいんだろう?」と頭を抱える親世代も多いようです。
有効な解決策としてあげられるのが「遺言」。遺言には大きく自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、前者は不備などにより新たな相続トラブルの火種になることもあることから、トラブル防止には後者が推奨されることが多くなっています。
さらにトラブル防止のために「遺産をそもそも残さない」という人も多くなっています。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』(2019年)では「遺産についての考え方」について尋ねています。それによると「子どもに残してあげたい」と回答したのが、60代で57.3%、70代で64.9%。半数以上がかわいい子どものことを考えています。
ただしほぼ無条件で財産を残してあげたいと考えているのは、60代で41.7%、70代で33.5%。「老後の世話をしてくれるなら」が条件なのが、60代で14.1%、70代で28.6%。「家業を継いでくれるなら」が60代で1.5%、70代で2.8%。「ただで遺産をもらえると思うな!」という人も結構います。
また「自分たちの人生を楽しみたいので、財産を使い切りたい」と考えているのが、60代で18.3%、70代で16.0%います。
――うちは遺産を残さない方針だから
初めから、そう宣言を受けていれば問題ありませんが、何も聞かされず、いざ相続が発生したら遺産ゼロという状況に直面したら、少々驚きかもしれません。
「そもそも遺産など、あてにしているほうが厚かましい」という声もあるでしょうが、厳しい経済状況が続くなか、現役世代にとっては「いいときの日本で良い思いをしたのだから、少しくらい財産を残してくれても……」というのが本音でしょうか。
厚生労働省『賃金構造基本統計調査』で所定内給与額の推移を見ていくと、1970~1980年代初頭は前年比5~6%、バブル期には前年比2~3%と落ち着きましたが、まだまだ給与はあがっていった時代。しかし1990年代後半からは0~1%代に落ち込み、昨今は前年比マイナス、という年も珍しくありません。時代的に物価の上昇というのもあったでしょうが、頑張れど頑張れど給料は上がらず……という現代よりは、夢のある時代でした(図表1)。
またこのコロナ禍、厚生労働省『毎月勤労統計調査』2021年1月速報によると、「現金支給総額」は前年比マイナス0.8%の27万2972円。前年比マイナスは、新型コロナウイルス感染拡大による第1回目の緊急事態宣言が発令となった、2020年4月以来、10ヵ月連続。こんな状況ですから、なおさら、不謹慎でも親の遺産に期待してしまうのも、分からなくもありません(図表2)。
親世代の不安の多くは、介護や医療です。「遺産は使い切る」と宣言している親でも、普段から身の回りの世話をしてあげていれば、「少しくらいは……」と心変わりするかもしれません。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走