この役ができるのは千栄子だけ…映画になくてはならない存在に

NHK連続小説『おちょやん』で杉咲花さん演じる主人公、浪花千栄子はどんな人物だったのか。夫の天外との20年の結婚生活に終止符を打った千栄子が潜伏先に選んだのは京都だった。彼女には休息が必要だった。人目に触れない場所で心身を休ませたかったのだろう。そのとき過去になりかけていた千栄子を必死で探す人物がいた。この連載を読めば朝ドラ『おちょやん』が10倍楽しくなること間違いなし。本連載は青山誠著『浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優』(角川文庫)から一部抜粋し、再編集したものです。

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千栄子の映画復帰第一作となった『瀧の白糸』

映画界で欠くことのできない存在に

 

『アチャコ青春手帖』の反響は大きく、千栄子には映画や舞台への出演依頼も相次ぐようになる。

 

映画産業の戦後復興は早かった。なんと、終戦から2週間が過ぎた8月末頃には新作映画が封切りされ、戦災を生き残った映画館には客が殺到していたという。

 

暗い場所と映写機さえあれば、どこでも映画は興行できる。焼け跡には粗末なバラックの映画館があちこちに建てられるようになり、夜には広場などを利用して上映会が開かれたりしていた。

 

昭和27年(1952)には、浪花千栄子も『瀧の白糸』で映画界に復帰したという。(※写真はイメージです/PIXTA)
昭和27年(1952)には、浪花千栄子も『瀧の白糸』で映画界に復帰したという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

撮影所もフル稼働で映画を作るようになる。サンフランシスコ講和条約が発効して日本が独立を回復すると、GHQによる映画への検閲も廃止された。


 
これまで厳しい規制を受けていた時代劇も、自由に上映できるようになる。

 

戦災を免れた古都の町並みや寺社仏閣は、戦前の頃と同様に恰好のロケ地として使える。時代劇は京都の映画業界が最も得意とする分野なだけに、さらに勢いづいて製作本数が増えていた。

 

昭和27年(1952)には、千栄子も『瀧の白糸』で映画界に復帰した。

 

この作品は、旅芸人一座を描いた物語で、主役の水芸人・瀧の白糸を演じたのが京マチ子。彼女はヴェネツィア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明監督の『羅生門』で三船敏郎と共演し、一躍脚光を浴びていた女優である。

 

千栄子は瀧の白糸の先輩芸人の役を演じている。松竹家庭劇に参加した頃から旅巡業を何度も経験しているだけに、この作品は経験を演技に活かせるところも多い。

 

主役の京マチ子と千栄子は10歳以上の年齢差があったが、昔からの親友のように仲良くなった。ロケ先の旅館では夜がふけるまで、ふたりでプライベートなことをいろいろと語りあったこともある。

 

映画では姉妹のように仲の良い芸人仲間という設定だけに、これも演技にプラスの効果があったようだ。この一作で千栄子の評価は高まり、銀幕への復帰に弾みがついた。

 

千栄子が映画女優として活躍した昭和初期頃とは、映画界の状況は大きく変わっている。東亜キネマや帝国キネマもいまはない。

 

彼女の映画復帰第一作となった『瀧の白糸』を製作した大映は、昭和17年(1942)に戦時統制の一環として、帝国キネマの後身の新興キネマをはじめとするいくつかの映画会社が合併して創立した会社である。

 

また、終戦後の昭和22年(1947)に、東宝を辞めた監督や俳優たちによって新東宝が創設され、昭和26年(1951)には東映が誕生している。これに戦前からある松竹、東宝をくわえた5社が、すべての日本映画を製作しているような状態だった。

 

たとえば、千栄子が映画女優復帰を果たした昭和27年(1952)に配給された日本映画は278本だが、そのうち273本はこの5社の手によるもの。中小の映画会社が乱立していた戦前とは違って、映画産業は大手による寡占化が進んでいた。

作家

大阪芸術大学卒業。著書に『古関裕而 日本人を励まし続けた応援歌作曲の神様』『安藤百福とその妻仁子 インスタントラーメンを生んだ夫妻の物語』(ともにKADOKAWA)、『江戸三〇〇藩 城下町をゆく』(双葉新書)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)などがある。

著者紹介

連載昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優一代記

浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優

浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優

青山 誠

角川文庫

幼いうちから奉公に出され、辛酸をなめながらも、けして絶望することなく忍耐の生活をおくった少女“南口キクノ”。やがて彼女は銀幕のヒロインとなり、演劇界でも舞台のスポットライトを一身に浴びる存在となる。松竹新喜劇の…

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