2025年、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」で、そのうちの約67万人の経営者が未対策で廃業の危機に直面しています。今回は、事業承継問題の実態を具体的な数字から見ていきます。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。

2025年、中小企業の約半分127万人が「後継者未定」

Q. 当社代表取締役は75歳を超えておりますが、身内の方は会社内にはおらず、また従業員の中に適任となる後継者もおりません。創業以来60年間経営を続けてきており、お取引先からも当社製品は評価を頂いておりますが、今後については見通しが立っていない状態です。最近、「事業承継」という言葉をよく聞きますが、どのような問題が生じているのでしょうか。

 

A. 中小企業の経営者は高齢化しており、中小企業庁が公表している資料によりますと、2025年には、70歳以上の経営者が245万人に及ぶとされています。他方、これらの中小企業においては、全中小企業の約半分にあたる約127万人が後継者未定の状態となっていると言われています。すなわち、後継者不在で廃業の危機にある中小企業がかなり多くある状況です。

 

後継者不足に悩む経営者は多い…(※画像はイメージです/PIXTA)
後継者不足に悩む中小企業経営者は多い…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

後継者がいる企業においても、代替わりを円滑に進める必要があり、その障害となり得る税の問題や相続における遺留分の問題、さらには経営者保証の問題について重要な課題と認識され、政府においても対応策を打ち出しているところです。

 

後継者がいる企業においては円滑な経営交代が求められ、後継者がいない企業においては事業の承継先を社外の第三者に求めねばならず、中小企業を対象としたM&Aを進めていく必要が生じています。

経営者の高齢化でどのように「事業承継」するかが課題

中小企業庁が公表する資料によれば、中小企業の経営者年齢の分布において、一番多い年齢層は69歳に至っております。

 

他方で、経営者の平均引退年齢はここ20年くらい変化なく70歳前後で推移していますので、今後5年から10年で現在の中小企業の経営者のかなりの割合が引退せざるを得ない状況になることが予想されます。

 

ところが、2016年度調査報告によると約381万者の中小企業者のうち約127万人の経営者において、現在、後継者が不在とされております。

 

したがって、後継者へ経営の承継ができずに廃業に至ってしまうリスクがかなり高まっている状況にあると言えます。実際、中小企業の休廃業・解散件数は2018年度で既に4万6000件を超えており、年々増加しております。

 

このような状況において、多くの中小企業の経営者において高齢化のために後継者へ経営をどのように承継するかが大きな課題となっており、「事業承継」問題として様々な対策が講じられています。

 

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ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

植木 康彦、髙井 章光、榑林 一典、宇野 俊英、上原 久和

税務研究会出版局

●本書は、事業承継時に想定される税務、法務、M&Aなどに関して、それぞれの分野の専門家が実務上起こりうる問題点を踏まえてQ&A形式でわかりやすく解説しています。 ●本書の特徴は、以下があげられます。 ・ベーシックな…

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