オルタナティブ投資の狙いは「ポートフォリオの分散」
デイビッド・スウェンセン氏率いるイェールのエンダウメントがいちはやくオルタナティブ投資に着目したのは1990年代前半でしたが、機関投資家による投資が本格化したのは2000年以降です。その後、15年間ほどで、オルタナティブ投資はすっかり定着しました。
では、なぜ、これほどまでにオルタナティブ投資が普及したのでしょうか。世界中の機関投資家がオルタナティブ投資を積極化している最大の目的は、ポートフォリオの分散効果を高めることにあります。
ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ博士は、現代証券投資理論の生みの親ですが、その有名な教えが「ひとつのカゴに卵を盛るな」でした。
伝統的運用では、株式と債券という別々の資産に分け、さらに投資対象地域を国内外に分散して、ポートフォリオの分散効果を狙うことにしたのです。たとえば、株式が不調でも、債券がカバーしてくれました。日本株が売られても、米国株や新興国株が堅調だったりしました。
ところが、1990年代以降、金融市場の様相がだいぶ変わってきました。グローバル化とIT革命の影響で、世界の市場間の相関が高まり、地理的な分散効果が得られなくなってきたのです。
ニューヨークが強ければ、東京もロンドンも上がる。香港に異変が生じると、欧米もその影響で売られる。日銀が金融緩和すると、日本国債だけでなく、米国債も英国債も買われるといった具合です。
そこで、市場の動きとは関係なく、一定の絶対リターンを狙うヘッジファンドや、市場性が低く、日々の市場の動きに反応しないオルタナティブ資産が分散対象として注目されるようになりました。
専門的な表現をすると、「リターンの出方が(伝統的運用とは)異なる」のです。仮に、期待リターンが同じだとしても、リターンの出方が異なる、リターンの相関の低い投資対象に分散することができると、ポートフォリオとしてのリスクを下げることができ、結果的に、リスク対リターンの効率性を改善することになります。
ヘッジファンド投資というと、いまだに一部では、ハイリスクで複雑な運用を行い、高いリターンを狙う運用などという誤解もありますが、機関投資家の目指す長期分散投資はまったく違う目的でヘッジファンドを高く評価しているのです。
オルタナティブ投資を活用する目的はおわかりいただけたかと思いますが、個人投資家にとって、大きな問題がありました。それは、こうしたオルタナティブ投資を行うファンドは機関投資家向け、せいぜい、プライベートバンクなどが富裕層向けに取り扱う程度で、一般の個人投資家には投資機会が開かれていなかったのです。
しかしながら、最近の金融技術の革新とリーマン危機後の金融業界の変貌が、それを可能にしてくれました。
山内 英貴
株式会社GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO
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