「ETF(上場投資信託)」は流動性が高くて換金が用意
資産運用の戦略をマッピングしたのが[図表1]です。縦軸に流動性(換金のやりやすさ)、横軸に透明性(市場価格の明確さ)をとり、伝統的運用とオルタナティブ投資を評価したものです。
左上にいけばいくほど、市場性が高く、換金がやりやすいことを示していますが、そこに位置するETFがここ数年間で急成長しています。
ETFとは上場投資信託で、エクスチェンジ・トレーディッド・ファンドの頭文字をとってETFと略称されています。投資信託協会のホームページ上での説明によると、「証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動をめざす投資信託」とされています。
もっとも、日本のETFはパッシブ運用型ですが、国外では指数連動型以外のアクティブ運用型ETFも増加し、多様化がすすんでいます。
ETFなら低コストでコモディティ(商品)にも投資可能
ETFのよさは2つあります。
第一に、インデックス・ファンドに比較して、コストが相対的に安く抑えられる点です。もちろん、それぞれのETFにもインデックス・ファンドにも個別の事情に基づいた商品設計がなされることから、個別商品ごとの違いはありますが、仕組みがしっかりしているものであれば、インデックス・ファンドと同じく分散が効いており、低コストという魅力があります。
個人投資家がアクティブ運用の高いコストから逃げ出すには、有益なツールであることは間違いありません。
第二に、ETFを通じて、低コストでコモディティ(商品)に投資することが可能になりました。
日本では、霞が関の縦割り行政の弊害で、証券市場と商品市場を別官庁が所管してきたため、コモディティに投資するには商品ファンドや商品先物取引などを使う必要がありました。ひとつの取引口座で、株や債券と、商品の投資を行うことができなかったのです。
ところが、金や原油などコモディティの各種指数に連動したETFが上場され、個人投資家がいつでも株式同様に比較的低コストで取引できるようになったのです。
つまり、ETFを使うことによって、伝統資産に対する低コストのインデックス運用と、従来はなかなか難しかったオルタナティブ資産への投資が容易になったのです。
ETFの価格が「現物」と異なることもあるので注意
ただし、ETFも万能とはいいきれません。売買を行うためには証券会社で手数料を支払う必要があることと、投資対象の現物証券の市場と、ETFの市場自体の流動性が乏しい場合、基準価額と市場価格がかい離して、投資家にとって不利な価格での取引が成立するリスクがあります。
通常は構造的にアービトラージ(裁定取引)の仕組みが働いて、市場価格は基準価額(理論価格)におおむね連動するはずですが、こうした点を知らないで、うっかりとお粗末なものに手を出さないように気をつける必要があります。