エンダウメント投資とは、米国の名門大学などが実践している「寄付金で財団や基金を設立し、寄付で集められた資産を元本にして運用する投資」のことで、20年以上にわたって安定した利回りをあげています。今回は、エンダウメント投資の4つの戦略を解説します。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『エンダウメント投資戦略』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「エンダウメント投資戦略」の4つの骨子

エンダウメント投資戦略の骨子とは?(画像はイメージです/PIXTA)
エンダウメント投資戦略の骨子とは?(画像はイメージです/PIXTA)

 

エンダウメント投資戦略の基礎をつくったのは、1985年にウォール街を離れてイェール大学の運用業務に転じたデイビッド・スウェンセン氏(以下敬称略)だといわれています。その骨子は4つです。

 

①長期で投資する
②分散投資を徹底する
③オルタナティブ投資を積極的に活用する
④外部の運用会社を使う

 

ここでは、簡潔にその投資戦略の要点をまとめてみます。

戦略1:「長期投資」で時間を味方につける

エンダウメントの資金は、他の機関投資家と違って、返済期限のない半永久的な運用資産です。そのことが、本物の長期投資を可能にしてくれます。では、長期投資がなぜ有利なのでしょうか。大きな理由は2つあります。

 

第一に、短期的な市場変動にアタフタしなくて済む(ようにできる)ということです。最悪の時期に損切りをし、必要のない早期の利食いをする、ということを避けることが可能になります。

 

売ったり買ったりの回数が増えるほど、確実に長期リターンをむしばむものがあります。取引コストです。投資におけるコストは、リターンを生むことはないので、無駄なコストをかけないことが成功の第一歩です。

 

また、たとえ時価評価でマイナス・リターンとなっても、基本的な投資方針にブレがなければ耐えることができます。なかなかそうはいかないでしょうが、本当は気にせずに忘れていたほうがいいかもしれません。

 

つまり、一喜一憂しないということです。大抵の場合、2008年の金融危機のように市場が大きく崩れるような局面では、ほとんどの投資家は多数派として苦境に立ちますし、メディアもこの世も終わりとばかりに騒ぐため、不安は募ります。しかしながら、狼狽は禁物なのです。

 

もちろん、それを可能にするためには確固とした投資方針を持っている必要があります。

 

第二に、長期投資の利点は、短期投資では不可能な資産や戦略に投資できるという点です。

 

時間を味方につける

極端な事例ですが、機関投資家の間でこのところ注目されている投資戦略のひとつに、インフラ(社会基盤)投資というものがあります。オルタナティブ(代替)投資のひとつなのですが、交通・物流・エネルギー施設などに対する投資です。

 

具体的には、新興国の幹線道路や空港、港湾施設や発電所、パイプライン、水道などの社会資本の建設資金に対する投融資です。こうした投資は回収期間がとても長く、投資元本が戻ってくるまでに20年とか30年、あるいはもっと長期間を要するのが一般的です。

 

これまでは、銀行が中心となって、シンジケート・ローン(協調融資)という形態で他の債権者とチームを組成して資金を提供することが多かったのですが、銀行も規制が強化される中で、短期の預金債務よりもはるかに長い回収期間となるこうした融資が難しくなりました。途中で現金化することも難しいからです。

 

ところが、日本の高度成長期と同じで、新興国の借り手は資金の手当てができれば発展に導く自信はあるので、多少割高な条件でも資金調達しようとします。

 

これが流動性プレミアムです。いつでもすぐに現金化できる投資に対しては資金の出し手が多く、市場価格が形成されますが、現金化の困難な長期の投資にはなかなか資金の出し手が現れないため、より高い金利など、投資家に有利な条件が設定されやすいのです。

 

エンダウメントの特徴は、こうした長期投資の利点を理解して、リターンの源泉を多様化している点にあります。

 

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エンダウメント投資戦略

エンダウメント投資戦略

山内 英貴

東洋経済新報社

米国屈指の名門ハーバード大学やイェール大学は、実は世界でもっとも先進的な機関投資家だった! その投資哲学から実際の運用手法、さらには個人投資家のための活用事例に至るまでわかりやすく解説する。

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