株式や債券以外に投資するのが「オルタナティブ投資」
オルタナティブは英語で“代替”という意味です。投資といえば、以前は、株式や債券など有価証券を買い、それを保有することを通じて利子・配当収入などのインカムゲインを得るか、買い値より高く売却することによりキャピタルゲインを得るというものでした。いずれにせよ、できるだけ安く買って、時間の経過とともに、後で高く売る、ことでした。
このような伝統的投資に対して、それ以外の新しい投資を総称してオルタナティブ投資と呼ばれており、範囲がとても広いのですが、その代表格は、ヘッジファンドとプライベート・エクイティ、不動産や商品(コモディティ)などの実物資産投資です。ハーバードやイェールなどのスーパー・エンダウメントが積極的に投資している対象もこれです。
プライベート・エクイティ
プライベート・エクイティは、プライベート(未公開・非上場)な有価証券に対する投資をさします。
ベンチャー・キャピタルのように、新興企業に資本を提供して成長を促し、株式上場によってリターンを狙う手法もあれば、再生ファンドのように、業績不振企業の業績を立て直し、株式再上場やM&Aなどによってリターンを狙う手法もあります。なかには、ハゲタカ・ファンドと悪名高い、企業をバラバラに解体して切り売りすることでリターンを狙う手法もあります。
伝統的投資との大きな違いは、投資対象の有価証券は上場していないので、流動性がきわめて低いことです。相手を見つけてこない限り、なかなか売却して資金を回収することはできません。
したがって、長期投資で臨むことが必要になるのですが、そうした流動性の低い投資対象に資金を提供したがる投資家が少ないので、より有利な条件で投資を行いやすくなります。これを流動性プレミアムといいます。
リアル・アセット(実物資産投資)
実物資産投資は、不動産やインフラ(空港・港湾や高速道路などの社会資本)、森林資源などへの投資で、こちらもプライベート・エクイティ同様に流動性が低く、投資資本の回収には長期間を要します。
これらの投資は、流動性の高い上場株式や債券に投資する伝統的運用と違って、流動性のきわめて低い資産、つまり”オルタナティブ資産”に投資を行います。
オルタナティブ戦略(リキッド・オルタナティブ)
一方、ヘッジファンドはまったく違って、投資する対象資産は上場株式や債券、デリバティブなど流動性が高いものです。投資対象自体は伝統的運用と同じです。なにが違うかというと、運用のやり方、手法の違いにあります。
伝統的運用の場合、たとえば株式運用であれば、株式市場自体が上昇しないとリターンを上げることはできません。
それに対して、ヘッジファンドの場合、機動的にリスクをとることが認められています。相場の先行きに弱気なら、空売りでリターンを狙うこともできます。もし、相場の先行きが不透明で、リスクをとりたくないと考えれば、いったんすべて現金にしておくことも可能です。
逆に、相場の先行きに強気であれば、レバレッジをかけて2倍3倍のリターンを狙うこともできます。もちろん、その反面、ファンド・マネジャーの見通しが外れた場合にはリスクもあります。
このように、定義の広いオルタナティブ投資は、オルタナティブ資産(不動産、コモディティ、インフラなど実物資産やプライベート・エクイティ)とオルタナティブ戦略(ヘッジファンド)に大別することができます。