「エンダウメント」と「機関投資家」の決定的な違い
個人投資家の話に入る前に、エンダウメント以外の他の機関投資家はどうなのか、みてみたいと思います。一口に機関投資家といっても、いろいろなプロがいます。大きく括ると、
①企業や公的機関などの年金基金
②銀行・保険などの金融機関
③エンダウメント、ソブリン・ウェルス・ファンド(国富ファンド、略称“SWF”)、ファミリーオフィス(富裕層)
という3つのカテゴリーに大別できます。
このうち、年金と金融機関はその運用資金の性格がとてもよく似ています。それは、年金債務や預金債務・保険債務という形で、家計(個人)から資金を預かり、運用しているということです。つまり、借金をして、それを運用しているのです。
こうした機関投資家は、一般的には、元本を保証して集めた資金を組織の役職員が運用しますので、元本をできるだけ毀損しない手堅い運用を好みます。また、運用状況を四半期とか年度などで管理し、評価する必要がありますので、大きなリターンよりも、できるだけ負けないという選択肢を選ぶことになります。
ですから、長期間でのパフォーマンスを追求するうえで避けて通れないリスク、一時的な評価上の損失(ドローダウン)を許容することが難しくなりがちです。
これに対して、エンダウメントはもともと寄付金をもとにして設立されているので、債務がなく、永久資本を永続的に運用することが前提となっています([図表1])。
これがエンダウメントと、年金や銀行など他の機関投資家との決定的な違いです。
エンダウメントと似たような性格をもつ投資家として、近年急速に存在感を増しているのがSWFです。これは新興国などの政府が運用資本を出資したファンドですので、借金が原資になっているわけではありません。
また、ファミリーオフィスとは、欧米の超富裕ファミリーなどが、一族の恒久的な資産管理を目的に設立した運用形態で、純粋な余剰資産を運用しているので、やはり債務はありません。
エンダウメントのポートフォリオは、リスクをとれない一般の機関投資家とかなり異質です。最近では、SWFやファミリーオフィスの多くも、その運用戦略の合理性と長期的な運用成果のすばらしさから、エンダウメント型投資戦略を志向しています。