米国ハーバード大学などの機関投資家は、寄付金で財団や基金を設立し、寄付で集めた資産を元本にして運用する「エンダウメント投資」を行っています。今回はそのエンダウメント投資の要である、リターンを確保しつつリスクのみ低下させる方法について解説します。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『エンダウメント投資戦略』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。
機関投資家の代表的な「3つの戦略ポートフォリオ」
市場変動に振らされない長期分散投資を追求するエンダウメント投資戦略にとって、オルタナティブ戦略であるヘッジファンドは欠くことのできないパーツです。
しかしながら、ハーバードやイェールなどのエンダウメントが期待しているのは、それ単独でのめざましいリターンではありません。
最大の目的は、市場に連動しないリターンの源泉を獲得すること。伝統的資産との相関が低いヘッジファンドをオルタナティブ戦略としてポートフォリオに加えることにより、エンダウメント・ポートフォリオ全体のリスクとリターンの特性を改善することが目的です。
ここで、株式中心の積極的ポートフォリオ、債券中心の保守的ポートフォリオ、エンダウメント型ポートフォリオの3つのポートフォリオを比較してみましょう([図表1])。
①株式70%・債券30%の積極運用型 ②株式30%・債券70%の慎重運用型 ③株式40%主体に、債券20%・オルタナティブ資産(REIT)10%・オルタナティブ戦略(リキッド・オルタナティブ)30%と分散したエンダウメント型
以上、3つのポートフォリオです。投資銘柄の選択(マネジャー・セレクション)に際しては、株式・債券・REITは代表的なインデックスに連動するETFを採用します。
コストが低いことと、各資産そのものが持つリターンの源泉をとりにいくことが目的で、そこには、あえて高いコストを払ってアクティブ運用の要素を混入する必要がないからです。これらのETFはいずれも投資可能です。
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株式会社GCIアセット・マネジメント
代表取締役CEO
日本興業銀行でトレーディング、デリバティブ関連業務に従事した後、2000年4月に独立し、オルタナティブ投資とグローバル投資を専門的に取り扱う資産運用会社グローバル・サイバー・インベストメント(現GCIアセット・マネジメント)設立。2007年4月より東京大学経済学部非常勤講師。東京大学経済学部卒。
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