個人がヘッジファンドに直接投資するのは難易度が高い
ヘッジファンド投資のスタートは、ヘッジファンドの特性を理解し、投資家自身のポートフォリオに組み込む絶対リターン型資産として認識することである。また、ポートフォリオ全体の中で、何を目的としてどの程度の組入れを行うのかという方針を決定する必要がある。
実験的に始めてみるという場合もあるだろうが、目的を明確化しない漠然とした形で投資を行うと、その後の評価が困難になる。少なくとも、期待リターン・リスクを明確化しておくことが求められる。
コンセンサスができ上がったら、次に(あるいは、コンセンサス作りと同時に)進める作業は、ヘッジファンド選定を自ら行い、ヘッジファンド・ポートフォリオを自ら構築するのか、あるいは、FOF(ファンド・オブ・ファンズ)※1またはゲートキーパー※2を利用して、そのプロセスをアウトソースするのかを決定することだ。
※1:投資信託が集めた資金を再び、タイプの異なる複数の投信に投資する仕組み
※2:ヘッジファンド投資を行う投資家のために、個別ファンドを評価し、ポートフォリオ組成を行う専門家。
ヘッジファンドへの直接投資には、多くの困難が存在する。ヘッジファンドの戦略は、難解で複雑なものも少なくなく、マーケット・ニュートラル型の安定志向運用であっても、実際には大きなリスクをはらんでいる場合がある。また、運用資産時価を正しく算出しているかを確認したり、限られた数のヘッジファンドで最適分散効果を得ることは容易でない。
ドキュメンテーションは英語であり、ファンド関係者の地理的所在もグローバルに分散している。優良ファンドの多くは、一見の投資家には門戸すらも開いてくれない。
要するに、現実問題として、世界中に6000以上あるといわれ、公には積極的営業活動をしていないヘッジファンドの中から優良な投資対象を探し出して、適切なポートフォリオを構築することは容易ではない。
そこで、FOFやゲートキーパーを利用するのが現実的な代替策となる。コストが二重にかかるという問題点があり、2008年に多くの投資家が経験した流動性やコミュニケーションなど課題も多いのは確かだが、それ以上の効用を認める投資家も少なくない。