日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「公的年金制度の実情」について焦点をあてていきます。

自分の将来のために積み立て…公的年金の勘違い

少子高齢化が進むなか、年金不安が広がっています。

 

――自分たちが年老いた時には、年金なんてもらえない

――年金をあてにできないから、今からしっかりしておかないと

 

将来が不安過ぎる…(※画像はイメージです/PIXTA)
将来が不安過ぎる…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

メディアでもそのような論調をたびたび目にするので、危機感ばかりが膨らんでいる人も多いことでしょう。果たして、「年金がもらえない」「年金制度が破綻する」などといったことは起きるのでしょうか。まずは日本の公的年金制度について、簡単におさらいしておきましょう。

 

日本の公的年金制度は「社会的扶養」の仕組みにより成り立ち、保険料を納めている20歳以上の国民のほか、受給者自身や企業など、社会全体で支えています。

 

そんな公的年金は、日本国内に住む20歳以上が全員加入する「国民年金(基礎年金)」と、企業などに勤めている人が加入する「厚生年金」の二階建て構造となっています。

 

ここで将来受け取る年金のために、コツコツと保険料を納めている……つまり公的年金は預貯金のようなものだと誤解している人が多いようですが、それは違います。日本の公的年金制度は「積立方式」ではなく、納められた保険料をその時々の給付に充てる「賦課(ふか)方式」。いうなれば単年度決算、というイメージです。

 

積立方式は、積立金を原資に運用収入を活用できる一方で、インフレによる価値の目減りや運用環境の悪化、運用収入の範囲でしか給付できないため年金の削減が必要となるなどのデメリットがあります。

 

一方、その時々の現役世代の保険料を原資とするので、インフレや給与水準の変化に対応しやすいのが賦課方式。しかし現役世代と年金受給世代の比率が変わると、保険料負担の増加や年金削減の必要がでてくるというデメリットがあります。

 

そこで少子高齢化が進むと、将来の現役世代が負担増となり、強いては年金額の減少、という不安が広がっているわけです。しかし国は現役世代の保険料負担が増えることは仕方がないが、際限なく保険料が上がることはない、としています。

 

公的年金は5年に一度、保険料を再計算するよう法律で定められています(財政再計算)。法律で保険料の上限が決められ、およそ100年先まで人口と経済の仮定を立て、一定の範囲内で給付水準を自動的に調整するようになっているのです(財政検証)。

 

厚生労働省の『2019(令和元)年財政検証結果レポート』を見ると、所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金給付水準の割合)は5割程度としています。

 

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