2025年には、65歳以上の人口が国民全体の30%になることが見込まれており、後期高齢者の増加が、今後の日本の福祉、医療における最大の課題になっています。国から「在宅医療」が推進されるなか、高齢者本人とその家族が安心して「最期」を迎えるためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、家族で「終活」に取り組むきっかけになる取り組みについて解説します。

高齢世代が一人で「終活」を進めるのはハードだが…

高齢になった親の意向を確認するのに、医療や介護、葬儀などの要望をはじめ家族への思いなどをしたためる「エンディングノート」を活用するのもいいと思います。

 

ただし高齢世代が自分一人で考えて記入し、記録を残すことは、実際にはまだまだハードルが高いようです。

 

会田薫子氏は、東京都健康長寿医療センター研究所の「ライフデザインノートの普及に関する研究報告書」について著書で記述しています。ライフデザインノートとは、同研究所が開発した、人生の最終段階における医療の希望を書き記すノートで、いわゆるエンディングノートと思っていいと思います。これを東京都の病院に通院している高齢患者の希望者に配布、その記載方法の説明会にも参加した高齢者114名を対象に、ノートの有用感について評価してもらった研究です。会田氏は、報告書の考察の一部を紹介しています。

 

「ライフデザインノートは、考えを整理し終末期医療の希望を考えるツールとして有意義と主観的に評価されたものの、実際の記入に至る人は半数程度であり、コミュニケーション促進としても作用しなかった。むしろ、死について考えることや家族に思いを伝達することは容易ではなく、記録を躊躇させた可能性が示唆された。

 

本研究の結果から、以下のことがわかった。

①終末期医療の希望について書き記し、伝達する必要があると認識している人でも、その思いを記述する難しさがあること、②終末期を含めた今後の生き方を現実的に考えるよう働きかけると、関心がある人であってもその思考プロセスを停止したり回避したくなる人もいること、③終末期医療の希望について考えが整理されたとしても、家族に伝える動機づけに直接的にはならない場合があること。(中略)

 

『患者の意思』の言語化と伝達を促進する手法は、単に記入様式の提示にとどまらず、直接的に関わり、促す仕組みが不可欠であることが確認できた。」

 

(会田薫子著『長寿時代の医療・ケア─エンドオブライフの論理と倫理』より)

エンディングノートをきっかけに話し合うことが重要

この研究から分かることは、要するにエンディングノートを入手し、高齢の親に「こんなものがあるよ」とただ渡すだけでは、実際の記入や話し合いにはなかなかつながらないということです。

 

高齢の親を持つ世代にエンディングノートを書いてみようとすすめるよりも自分で書いたものを親に見せたり、「一緒に考えるから書いてみない?」と誘うほうが現実的かもしれません。当然、親御さんの気が進まないときや抵抗を示すときは無理にすすめる必要はありません。記録を残すこと自体より、ノートをきっかけに家族で話し合いをしてもらうことのほうがはるかに大切だからです。

 

 

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続・死ねない老人

続・死ねない老人

杉浦 敏之

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな人でも懸命に生きたその先に、必ず死を迎える。 大切な人生の終わりを“つらい最期"にしないために何ができるのか――。 「死」を取り巻く日本の今を取り上げつつ、 自分の最期をどのように考え、誰にどう意思表示…

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