自宅で老親の介護をするのは大変ですが、介護される側から見ると、大きなメリットもあります。入院すれば、患者は常に「アウェイ」な場所に置かれますが、自宅はホームグラウンド。普段の暮らしを保ちながら医師と接することができるのです。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

在宅担当医と、初対面から打ち解けるのは難しいもの

在宅での介護を始めるとなると、遅かれ早かれ在宅医に来てもらうことになるということが予想できます。私はもともと、両親の家族でもありながら在宅担当医としても二人を診ていました。

 

父のほうは介護期間が長かったこともあり、さすがに在宅医に依頼をしましたが、そのときは医師のつてを使って、知り合いの医師に来てもらうことにしました。もともとの勤務先である近畿大学医学部附属病院の先生でした。

 

父は特に、自分自身が医師であるにもかかわらず認知症になったということにショックを受けていましたし、物忘れがひどくなったり、通常の生活ができていなかったりする姿を他人に、特に同じ医師に見られてしまうことにあまり良い思いをしていなかったのかもしれません。

 

一般的に在宅医に訪問診療を依頼する際、病院の地域連携室などに相談し、ソーシャルワーカーを介して、地域の在宅医を紹介してもらう。そういう流れが最も多いのです。

 

在宅での診療はすでに緩和ケア段階になっている状況で医師と「はじめまして」で顔を合わせて、そこからスタートします。

 

もちろん、医師側もそのあいだに痛みをなくすような治療法を試してみたり、せっかく自宅で暮らすのですからQOL(生活の質)を向上させるための様式を考えたりと、医師として可能なことを行うようにはするはずです。

 

ただ、初対面の医師にいきなり家族との関係や、病気に対する考え方、さらには「死」との向き合い方などを躊躇なく話す人はなかなかいないでしょう。その医師が本当に信頼できるのかもまだ分からない状況だと思います。

 

一般の方にはつてなどありませんから、私のようなことはできませんし、最初に来てもらった医師に対して慣れていくしか方法はないと思われるでしょうが、私はそうは考えていません。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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