日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「退職金」。コロナ禍で将来不安が広がっているなか、「退職金で一発逆転」を狙っている人も多いでしょう。そんな退職金、現状を見ていきましょう。

世帯主40歳未満世帯…純貯蓄は−650万円

「老後資金2,000万円問題」で資産形成への関心が高まりつつありましたが、コロナ禍の給与減などにより、思うように貯蓄が進まなくなったという人も多いのではないでしょうか。

 

総務省の『家計調査』(2019年/令和元年、二人以上の世帯)によると、貯蓄現在高は世帯主40歳未満世帯で平均691万円、40〜49歳世帯で1076万円、50〜59歳世帯で1704万円、60〜69歳世帯で2330万円です。

 

一方で負債現在高は、世帯主40歳未満世帯で平均1341万円、40〜49歳世帯で1124万円、50〜59歳世帯で652万円、60〜69歳世帯で250万円。

 

そして貯蓄現在高から負債現在高を引いた純貯蓄現在高は、世帯主40歳未満世帯で平均−650万円、40〜49歳世帯で−48万円、50〜59歳世帯1052万円、60〜69歳世帯で2080万円となっています(図表1)。

 

出所:総務省『家計調査』2019年(令和元年)平均結果より作成
[図表1]年齢階級別「純貯蓄額」
出所:総務省『家計調査』2019年(令和元年)平均結果より作成

 

自分の世帯は平均よりも上か、それとも下かはさておき、会社員世帯ではあれば「最後に定年退職金で逆転」と考えている人もいるのではないでしょうか。一方で「うちの会社は退職金制度がないから絶望的」と悲観している人もいることでしょう。

 

退職金制度は大きく2種類の制度があります。ひとつが「退職一時金制度」。退職時に一括で退職金を支給する制度です。もうひとつが「退職年金制度」。年金制度を活用して一定期間、または生涯にわたり給付を行う制度です。

 

常用労働者30人以上を雇用する民営企業を対象に主要産業における企業の労働時間制度、賃金制度等について総合的に調査する、厚生労働省の『就労条件総合調査』(平成30年)によると、退職金給付金(一時金・年金)制度がある企業は80.5%。「従業員30〜99人」企業では77.6%、「従業員100〜299人」企業で84.9%、「従業員300〜999人」企業で91.8%、「従業員1000人以上」企業で92.3%と、企業規模が大きくなるに従い、制度の充実が見られます。

 

また退職金給付制度ある企業のうち、「退職一時金制度のみ」の企業が73.3%、「退職金制度のみ」8.6%、「両制度併用」が18.1%となっています(図表1)。

 

出所:厚生労働省『平成30年就労条件総合調査』より作成
[図表1]退職給付(一時金・年金)制度の有無 出所:厚生労働省『平成30年就労条件総合調査』より作成

 

退職金制度は従業員のモチベーションアップにつながり、勤続年数が増加するというメリットがあります。また退職金制度があることで、採用活動が優位に働くことも期待できます。

 

一方退職金制度がない場合、従業員が一斉に退職する時期でも現金を工面する必要がなく、資金繰りのリスクがない、というメリットがあります。

 

退職金制度は時代に即したものにしようと、見直しが行われることも珍しくはありません。退職一時金制度について、「新たに導入、または既存のものの他に設置」など、過去3年間に見直しを行った企業は全体の9.3%。退職年金制度について、「他の年金制度の移行」など、過去3年間に見直しを行った企業は5.1%となっています。

 

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