大切なのは「売りの形」と参加者の心理を読むこと
特に、「売りの形」の背景にある相場参加者の心理は常に意識しておいて欲しいと思います。
「売り」を上手にできることこそが、株式投資の成功につながると私は考えます。「売り」に関わる心理的な側面について考えると共に、「売り」の具体的なタイミングの図り方を相場格言を用いながら見ていきたいと思います。
ところで、江戸の米相場は先物取引が主流だったため、「売り」から入る取引も一般的に行われていました。そのため、「売り」に関わる格言では、買ったものを手仕舞いするための「売り」ではなく、空売りを指したものが多くあります。たとえば、「順鞘は売り」という相場格言の「売り」は、本来は手仕舞い売りではなく空売りのことです。
現在の株式相場でも、信用取引を利用することで「空売り」が可能です。ただ私の考えとしては、信用取引、特に空売りはおすすめしません。
なぜなら、必要がないと思うからです。信用取引は確かに手持ちの資金以上の取引ができるという利点はありますが、思惑通りに株価が動かなければ大きな含み損を抱えることになってしまいます。
特に、空売りの場合は、損失が青天井に膨らむ可能性があります。100円の株を買って下がった場合、最大でも損失は100円ですが、100円で空売りして、その後500円まで上昇すれば400円の損、1000円まで上がれば900円も損をすることになるからです。さらに、どこまで上がるかはわかりません。
「でも、下げ相場は売りから入らないと儲からないから」と言う人もいますが、そんなことはありません。
どんなに下げている相場でも、上がる銘柄は少数ながらあるものです。無理に「ここからもっと下がる銘柄」を空売りするよりは、そうした上がる銘柄を探していけばいいのです。
もっといえば、相場全体が下げている途中でわざわざ「何か取引しなくては」と考える必要はありません。いつ何どきでも少しでもいいから利益を得たいと思うことこそ、江戸の相場格言で強く戒めている「焦り」だからです。