空き家問題に潜む、日本の高齢化問題
さらに国土交通省では、『住宅・土地統計調査』で「居住世帯のない住宅(空き家)を所有している」と回答した世帯を対象に『空き家所有者実態調査』を行っています。
それによると、空き家の89.6%が「一戸建て」で、築40年以上となる「昭和55年以前」のものが69.1%。築70年以上となる「昭和25年以前」のものも17.8%にも及びます。
そして空き家で最も気になるのが、その状態です。「腐敗・破損がある」が54.8%で、半数以上が何かしら手を入れないと住居として利用できない状況にあるといっていいでしょう。
また空き家は「最寄りの鉄道の駅から2㎞以上」が最も多く39.9%。交通の便が悪く、住むのも貸すのも不便であるから空き家となり、腐敗や破損が進む……空き家問題の根深さが伺えます。
そんな空き家を「取得するに至った経緯」としては、「相続」が最も多く54.6%。次いで「建て替え」が18.8%、「中古住宅購入による」が14.0%と続きます。また建築時期が古いほど「相続」による取得が多くなり、「1950年以前」では78.7%となっています。
また「空き家取得に際し、名義変更した、または新たに登記を行った」が76.7%。「いずれも行っていない」が15.3%で、その理由で最も多いのが「登記や名義変更しなくても困らない」で49.6%となっています。
一方で空き家を所有する立場として、頭を悩ませるのは管理の問題。一番の問題はやはり「住宅の腐敗・破損の進行」で58.0%。「樹木・雑草」が41.9%、「不審者の侵入や放火」が32.1%と続きます。そして空き家所有者の約3割、29.3%が「管理の作業が大変」と回答しています。
「空き家のままにしておく」が28.0%
このような空き家ですが、今後、どうするのでしょうか。調査時点で5年後の利用意向を聞いたところ、「空き家のままにしておく」が28.0%、「セカンドハウスとして利用」が18.1%、「売却」が17.3%と続きます。
この割合で考えると、約3割が「空き家のまま」ということですから、全国250万戸近い空き家は、所有者の意向で解決は図られないことは決定済み、といった計算です。
約2割の「売却」希望者ですが、売却や賃貸するにも空き家の場合は「買い手・借り手の少なさ」42.3%、「住宅の傷み」30.5%、「設備や建具の古さ」26.9%と、建築時期の古さからくるであろう課題が山積。希望を叶えるのは困難な状況といえそうです。
相続で一戸建てを取得した65歳以上の高齢者。最寄駅からも遠く、築40年以上で腐敗や破損もあるので、売却も困難。管理も大変でどうしたものか……。
これが空き家によくあるシーンといえるでしょうか。空き家の増加は高齢化問題と密接に絡み合っているといえるでしょう。
2015年に空き家対策特別措置法が施行され、市区町村は空き家所有者に助言や勧告ができるようになりました。改善の命令に従わない場合は、建物を撤去し、費用を持ち主に請求することもできます。しかし空き家の所有者には、身動きができずに仕方なく放置している人も多いことを、忘れてはいけません。
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