英国中央銀行が議事録等で英国景気について比較的強気な見方を示したことや、マイナス金利について早期に導入する見込みはないことが確認されたことなどを受け、ポンド、英国債利回りは上昇しました。ただ、今回の英中銀の発表内容で注目されたマイナス金利については、銀行などに準備を促すなど、中長期的な導入の可能性には含みを残すに留まりました。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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英国中央銀行:英中銀は景気の先行きに比較的強気、マイナス金利早期導入に否定的

イングランド銀行(英国中央銀行)は2021年2月3日まで開いた金融政策委員会の議事要旨などを4日に発表しました。金融政策は市場予想通り、政策金利を過去最低の年0.1%で、国債などを購入する量的緩和策は購入枠の総額を8950億ポンド(約129兆円)で据え置きました。

 

英中銀の発表を受け、英国債利回りは上昇し、ポンドは上昇する展開となりました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年2月4日~2021年2月5日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]英国10年国債利回りとポンド(対ドル)の推移 日次、期間:2020年2月4日~2021年2月5日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、注目されていたマイナス金利の導入については、早期の導入は見送られることが確認されました。

どこに注目すべきか:英国中央銀行、ワクチン接種、マイナス金利

英中銀が議事録等で英国景気について比較的強気な見方を示したことや(図表2参照)、マイナス金利について早期に導入する見込みはないことが確認されたことなどを受け、ポンド、英国債利回りは上昇しました。ただ、今回の英中銀の発表内容で注目されたマイナス金利については、銀行などに準備を促すなど、中長期的な導入の可能性には含みを残すに留まりました。

 

期間:21年~23年各1-3月期、予想時点20年11月(左)と21年2月(右) 出所:英国中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]英国中央銀行の英国経済成長率(年率換算)の予想 期間:21年~23年各1-3月期、予想時点20年11月(左)と21年2月(右)
出所:英国中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

英中銀の政策スタンスを再確認すると、政策金利と量的緩和は据え置かれ、フォワードガイダンスも維持しています。雇用市場が回復し、インフレ目標を持続的に達成する証拠が得られるまで金融緩和政策を維持する姿勢です。

 

一方で、英中銀の経済予想を見ると、比較的楽観的なトーンとなっています。英国では足元新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が制限されていることから、21年1-3月期の成長率についは昨年11月時点の予想から下方修正しています。

 

しかしながら、英中銀は今後について、英国におけるワクチン接種の拡大が景気回復を下支えすることに期待感を示しています。また、経済活動の制限についても、昨年前半の全面的な活動制限とは異なり、景気への悪影響が低い可能性も指摘しています。

 

また、長期的には懸念を示すも、英国の欧州連合(EU)離脱の混乱は今のところ想定の範囲内であることから22年1-3月期の経済成長率を14.2%に上方修正しました。失業率も今回は5.7%と前回の予想(6.1%)から改善させています。

 

次に、マイナス金利については、実現可能性の調査結果が示されました。英国中銀は導入の準備は進めるが、早期のマイナス金利の導入には否定的と見られます。

 

英中銀は政策金利をマイナスとした場合の金利の階層化について研究を開始すると表明しました。金利の階層化は既にマイナス金利を導入している欧州中央銀行(ECB)等が市中銀行の準備預金の一部にマイナス金利適用を免除するものです。中長期的な導入の意思が示唆されています。

 

一方で、英中銀は短期的にマイナス金利を導入する意図がないことを強調しました。また、副作用やショックを軽減するのに半年は必要と説明しており、英中銀が年後半の景気回復や、英国のインフレ率が今年末で2%程度を見込んでいることから、当面マイナス金利導入は考えにくいと思われます。マイナス金利はEU離脱の影響など長期的な不確定要因に備える政策手段として準備はしておくという位置づけと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国中央銀行、マイナス金利早期導入を否定』を参照)。

 

(2021年2月5日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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