インド21年度予算の財政拡大と市場への影響

インドのGDP(国内総生産)成長率は20年7-9月期で前年同期比マイナス7.5%で(本文内図表2参照)、20年通年でもマイナス8%程度が見込まれています。モディ政権にとって、景気回復の鍵となるのが21年度予算案です。国際通貨基金(IMF)はインドの21年の成長率を11.5%と急回復を見込んでいますが、実現に向け財政、金融政策の一体感が求められそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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インド21年度予算案:新型コロナウイルスによる景気悪化からの脱却を最優先

インド財務省は、2021年2月1日に21年度(21年4月~22年3月)の当初予算案を発表しました。歳出総額が前年度比14.5%増の約34兆8千億ルピー(約48兆円)が盛り込まれ、景気回復が最優先の予算案となっています。

 

21年度予算案により国債発行が増加するとの観測から、インド国債市場では1月末から10年国債利回りが急上昇しています(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年2月3日~2021年2月3日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インド10年国債利回りとルピー(対ドル)の推移 日次、期間:2020年2月3日~2021年2月3日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:インド予算案、インフラ投資、ワクチン接種

インドのGDP(国内総生産)成長率は20年7-9月期で前年同期比マイナス7.5%で(図表2参照)、20年通年でもマイナス8%程度が見込まれています。モディ政権にとって、景気回復の鍵となるのが21年度予算案です。国際通貨基金(IMF)はインドの21年の成長率を11.5%と急回復を見込んでいますが、実現に向け財政、金融政策の一体感が求められそうです。

 

月次、期間:2016年12月~2020年12月、GDP四半期、20年7-9月期迄 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インドのインフレ率(CPI)とGDP成長率の推移 月次、期間:2016年12月~2020年12月、GDP四半期、20年7-9月期迄
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、インドの21年度予算案を3点に絞って振り返ります。1点目は経済成長の基盤としてインフラ関連などの投資に重点を置いていることです。特にインフラ関連では前年度比で道路や鉄道などの交通は37.4%増、農村開発が34.3%増、都市開発も9.0%増となっています。

 

2点目はコロナ対策としてのヘルスケア費用は10.5%増と従来予算よりも増加させています。インドのコロナ累計感染者数は米国に次いで世界で2番目に多いことから、コロナ対応が経済対策とも言えます。具体的には、コロナのワクチン関連費用に3500億ルピーが盛り込まれています。

 

なお、インドでは、1月からワクチンの接種が始まり、政府は医療従事者や50歳以上の人、基礎疾患のある人を優先し、夏までに3億人に接種する計画です。今回のワクチン接種の予算はインド政府の計画と整合的と見られます。

 

3点目はシタラマン財務相が予算演説で明らかにした市中銀行の不良債権の受け皿となるバッドバンク設立計画です。インドの金融機関に不良債権問題が残ることは、インドの経済成長の抑制要因でもあっただけに、今後の動向に注目しています。

 

21年度予算案に対するインド市場の反応は様々ですが、資金調達のしわ寄せが想定される国債市場では利回りが急上昇(価格は下落)しました。財政政策をフル活用した成長戦略はインド政府の借入を過去最大規模に引き上げると見られます。その結果シタラマン財務相によると、20年度の財政赤字対GDP比率は9.5%、21年度は6.8%を見込んでいます。これに対しては格付け会社から懸念を指摘する声もあります。

 

このような中、政府の資金調達を円滑にする点でインド準備銀行(中央銀行)の役割は重要です。インフレ率上昇(図表2参照)に配慮しつつ低金利を維持する神経質な金融政策が求められます。インドの消費者物価指数(CPI)は来週に1月分が公表予定ですが食料品価格の下落でCPIに下押し圧力がかかっており、従来の据え置き予想から、市場では利下げの可能性も指摘され始めています。経済成長の主役を演じる財政政策を金融政策がどのようにサポートするのか、その姿勢を確認する点で2月5日の金融政策決定会合に注目しています。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド21年度予算の財政拡大と市場への影響』を参照)。

 

(2021年2月4日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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