1990年以来の2万8,000円台を回復
■日経平均株価は、1年前に始まった新型コロナ禍の影響で一時大きく下落しましたが、その後各国の思い切った金融・経済対策、米国の政局不透明感の払拭、複数の製薬会社からワクチンの開発進展が報告されたことなどから急上昇しました。今年1月8日には終値ベースで1990年以来の2万8,000円台を回復しました。日経平均株価の急上昇に対して、市場では強弱感が対立しています。
企業は資本効率改善にシフト、利益と株価の相関が高まる
■そこで長期的観点から日経平均株価と法人企業統計の経常利益(全産業、全規模)の推移を見ると、日経平均株価が1989年12月29日に38,915.87円の最高値を付けたバブル相場までは、株価が利益と乖離して上昇する局面もありましたが、その後は概ね両者の相関が高まっていることが見て取れます。
■バブル相場前は経済成長率が高く、企業は売り上げ拡大を優先していました。また上場企業は事業法人、金融機関の間で強固な株式持ち合い状況にあり、需給面から利益に比べ株価が割高な状況が続きました。また持ち合いの株主は経営への要求が少なくROE(株主資本利益率)の改善などは進みませんでした。その後持ち合い解消が進むなか、ガバナンス(健全な企業統治)強化などを求められ、ROEの改善などが経営の優先事項となりました。利益水準の改善が着実に進み、その結果、株価と利益の相関は高まったと考えられます。
利益の改善や伸びが続けば、相場上昇の追い風
■2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などでは株価下落、利益は減少しましたが、各国の金融・経済政策効果などから、いずれも回復し株価も上昇しました。今回も新型コロナにより大きな影響を受けましたが主要国の金融緩和政策は維持され、また、財政政策も適宜発動される見通しです。今回は株価上昇が先行していますが、回復しつつある利益の改善や伸びが続けば、相場上昇の追い風になるとみられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価を長期的に利益から見ると?』を参照)。
(2021年2月5日)
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