都道府県別にみる「がん検診受診率」
世界保健機関(WHO)のがん専門家アンドレ・イルバウィ氏は、2020年にがんと診断された患者数は1930万人、がんが原因で死亡したのは1000万人と明らかにしました。新規がん患者で最も多いのが乳がんで、肺がん、大腸がんと続きます。ここで注目なのが、長らく新規がん患者第1位だった肺がんが2位となり、代わって乳がんが新規患者数で最も多いがんになったことです(ちなみに第3位は大腸がん)。
WHOでは、乳がんの主な要因は肥満だとしています。またイルバウィ氏は新型コロナウイルスのパンデミックによって、がんの治療が中断されていると強調しました。
ここ日本でも、新型コロナウイルス感染症を恐れて、密になる場所は避けたいと、がん検診の受診率は大幅に落ち込んでいるといわれています。
厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、日本人の死因第1位はがん。全死亡者数の27.3%を占めています。また国立がん研究センターによると、死亡数が多いのは「肺がん」で、「大腸がん」「胃がん」「膵臓がん」「肝臓がん」と続きます。男女別に見ていくと、男性で最も多いのが「肺がん」で、女性で最も多いのが「大腸がん」です(関連記事:『都道府県ランキング「がん死亡率」20年連続1位の意外な県は?』)。
また生涯がんに罹患する確率は、男性で65.5%、女性で50.2%。全国民の半数以上が生涯で1度はがんを経験する計算です。
がんは遺伝する……といわれていますが、遺伝によるがんは5%程度で、食生活や喫煙、運動不足など、生活習慣が主原因ということが多いのが現状です。また医学の進歩はすさまじく、現在、約6割のがんは治るようになったといわれています。特に初期のがんは早期発見が有効。そこで重要なのががん検診です。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」で、都道府県、がんの種類別に検診受診率を見ていくと、胃がんの検診受診率は全国平均39.0%。最も受診率が高いのが「山形県」で56.1%。「新潟県」「宮城県」「福島県」「山梨県」と続きます。一方、胃がんの検診受診率が最も低いのが「大阪府」で32.5%。「兵庫県」「山口県」「徳島県」「北海道」と続きます(図表1)。
続いて「大腸がん」。検診受診率の全国平均は41.2%。最も受診率が高いのが「山形県」で56.0%。「宮城県」「山梨県」「新潟県」「青森県」と続きます。一方で最も受診率の低いのが「山口県」で32.9%。「徳島県」「和歌山県」「北海道」「福岡県」と続きます(図表2)。
「肺がん」の検診受診率の全国平均は45.8%。最も受診率が高いのが「山形県」で62.2%。「宮城県」「山梨県」「新潟県」「群馬県」と続きます。一方で最も受診率が低いのが「北海道」で37.8%。「大阪府」「京都府」「福岡県」「兵庫県」と続きます(図表3)。
女性に多いがんも見ていきましょう。「乳がん」の検診受診率の全国平均は37.4%。最も受診率が高いのが「宮城県」で50.8%。「山梨県」「山形県」「千葉県」「沖縄県」と続きます。一方で最も受診率が低いのが「山口県」で26.8%。「長崎県」「北海道」「島根県」「和歌山県」と続きます(図表4)。
さらに「子宮頸がん」の検診受診率は全国平均35.8%で、最も受診率が高いのが「山形県」で62.2%。「宮城県」「山梨県」「新潟県」「群馬県」と続きます。一方で最も受診率が低いのが「北海道」で37.8%。「大阪府」「京都府」「福岡県」「兵庫県」と続きます(図表5)。