教員の質が保てない?「競争率2倍未満」の県は…
大量退職については、ずいぶん前からわかっていたことなので、地域の採用計画自体に問題があるのではないか、という指摘もあります。そこで公立学校教員採用選考試験について、細かくみていきましょう。
都道府県別に公立学校教員の採用選考試験の総数(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護教諭、栄養教諭)で見ていくと、最も競争率が高いのは「沖縄県」で8.1倍。「高知県」7.4倍、「兵庫県」「大阪府」が6.0倍、「三重県」が5.9倍と続きます。
一方で最も競争率が低いのが「山形県」「富山県」で2.4倍。「佐賀県」「長崎県」2.7倍、「茨城県」「広島県」2.8倍と続きます(図表1)。
続いて小学校*に限定して見ていきましょう。最も競争率が高いのが「高知県」で7.1倍。「鳥取県」「兵庫県」「奈良県」「沖縄県」と続きます。一方で競争率が低いのが「佐賀県」「長崎県」が1.4倍、「富山県」「福岡県」が1.6倍と続きます(図表2)。
一般的に選抜試験などにおいて倍率が2倍を切ると、採用者の質をキープできなくなるといわれていますが、競争率1倍代は10県に及びます。
続いて中学校*。競争率の高いのは、「高知県」9.4倍を筆頭に、「三重県」「神奈川県」「青森県」「秋田県」。一方で競争率が最も低いのが「茨城県」2.6倍。「山形県」「佐賀県」「愛媛県」「広島県」と続きます(図表3)。
高等学校*で最も競争率が高いのが「新潟県」で31.2倍。新潟県で公立高等学校の教師になるのは、かなり難しい状況です。一方で最も競争率が低いのは「茨城県」で4.4倍。「山形県」「長野県」「岐阜県」「北海道」と続きます(図表4)。
中学校と高等学校では、すべての地域で「競争率2倍以上」をキープしています。
*小学校と中学校、中学校と高等学校の試験区分を一部わけずに採用選考を行っている県があり、小学校のカウントでは東京都、大阪府、熊本県、中学校と高等学校のカウントでは、宮城県、千葉県・千葉市、東京都、富山県、石川県、福井県、沖縄県についてはの競争率のカウントは行っていない。
小学校の競争倍率は「2」を切っており、危機的状況にあるといっていいでしょう。そこには業務負担が大きいことも関連していると考えられます。2022年度をめどに小学校高学年では「教科担任制」を導入するなど、負担減を進めています。
教員の質の低下による弊害は、私たちの子ども世代が被りますし、強いては将来、その子どもたちに支えられる、私たち世代の生活にも悪影響を与えることでしょう。教員採用試験の競争率の担保。実はここ日本において、最重要課題のひとつといえるかもしれません。
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