「公立学校の教員採用試験」が大変なことになっている
文部科学省より、2020年度採用の公立学校教員の採用倍率が発表されました。なかでも小学校の教員の採用倍率が全国平均で2.7倍と、過去最低になったことが大きく取り上げられています。
2020年度の公立学校教員(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護教諭、栄養教諭)採用選考試験の受験者総数は13万8042人で、前年から1万423人の減少、採用者総数は3万5058人で、前年度から106人増加、全体の競争率(採用倍率)は3.9倍で、前年4.2倍から減少となりました。
小学校の競争率は2.7倍で、前年度2.8倍から減少、中学校の競争率は5.0倍で、前年度5.7倍から減少、高等学校の競争率は6.1倍で、前年度6.9倍から減少と、小学校に限らず前年度から減少しています。
その要因としてあげられているのが、大量採用となった団塊の世代が定年を迎え、大量退職をしていること。小学校でいえば、2000年度に過去最高の12.5倍を記録し、小学校教諭になるには高い壁がありましたが、その20年後には採用者数は5倍に増え、採用倍率は2.7倍まで減少しました。
文部科学省の分析では、「近年の民間企業等の採用状況が好転していることや新規学卒者の採用者数の増加等により、教員採用選考試験に不合格となった後、講師を続けながら教員採用選考試験に再チャレンジする層が減ってきていることが主な理由」としています。
確かに新型コロナ感染が拡大する前の経済状況を考えると、新卒者の多くが民間企業に魅力を感じていたことは確かでしょう。しかし、教育現場の劣悪な労働環境に対し、教師を志す人が少なっていることを指摘する声は多くあります。現場の教師からの悲鳴もよく聞くでしょう(関連記事:『現役小学校教師が語る「教職」というブラック労働の実態』)。
そこにきて、このコロナ禍です。現場では消毒につぐ消毒で業務がさらに増加。感染の動向によって右往左往し、非常に混乱していると聞きます。単に民間企業の採用が好調だから、退職者が大量にいるから……という理由では片づけることのできない状況なのです。
採用倍率が低いとどうなるのでしょう。学校の先生になりやすくなるわけですから、教員志望者にとっては嬉しいことです。しかし教師の質の問題があります。一定の競争性があることで教室の質は担保される、という側面があるので、採用倍率を上げる必要があるのです。萩生田光一文部科学相も記者会見で「教師の人材確保と質向上の両面から、教師の養成や採用などの制度について検討を進める必要がある」と言及しています。
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