相続にまつわるトラブルの原因のひとつに、「介護問題」があります。「介護をしたほうが遺産を多くもらうのは当然」と思っていると、親の遺志とは裏腹に、仲がよかった兄弟間に亀裂が生じかねません。今回は、編集部に届いた介護問題が絡んだ相続にまつわるトラブルについて、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士に伺いました。

解説:ポイントは長男が「記録していたか否か」

先ほどのケースは、相続手続の現場で非常によく目にします。同居していた相続人は「自分が介護して負担がかかっていた分、多く財産をもらってしかるべき」と主張します。一方、他の相続人は「介護してくれていたことは感謝しているが、その分、親から多くの援助を受けていたはず。だから、遺産分割は平等に行うべき」と主張します。

 

今回は、預貯金が減った経緯について、長男(Bさん)が記録を残しておいたかがポイントになります。

 

もちろん長男(Bさん)が、実家の管理や父(Aさん)の入院費に使っていたのであればまったく問題ありません。ただし、長男(Bさん)が自分のものとして使ってしまったら問題です。

 

父(Aさん)の同意のもとで預貯金の一部を受け取っていた場合には「生前贈与」に該当しますので、特別受益として遺産分割協議で考慮する必要があります。そして、相続税の計算上、故人の死亡前3年以内の贈与であれば「生前贈与加算」として相続税の対象になります。

 

しかし、父(Aさん)の同意がなかった場合には、返還が必要になります。つまり、相続税の計算上は「贈与」とはならずに、父(Aさん)から長男(Bさん)へ預けていたお金(財産)として、相続税の対象になります。

 

どの処理になるにせよ、「記録」を残しておくことが非常に重要になります。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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